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「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン」展 :万能の天才は二十世紀にもいたんですね [美術 : 美術展、写真展紹介]

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三菱一号館美術館で開催中の「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン」展内覧会に行ってきました。
例によって特別な許可をもらって写真撮影しています。普段は特定エリアを除いて撮影禁止です。

★ 展示内容

マリアノ・フォルチュニは、ファッション・デザイナーにして写真家。染織工房で染織も手がけつつ、舞台美術の製作もこなす。そして、元々は画家でもある、そんな多才な人だった。十九世紀末、スペイン南部のグラナダで生まれ、父はプラド美術館にも作品が飾られている画家のMariano Fortuny y Marsalだ。

今回の企画展はそんなマリアノ・フォルチュニの多才さを余すところなく紹介している。展示構成は以下の通り。
  • 序章 マリアノ・フォルチュニ ヴェネツィアの魔術師
  • 第1章 絵画からの出発
  • 第 2 章 総合芸術、オペラ ワーグナーへの心酔
  • 第 3 章 最新の染織と服飾 輝く絹地と異国の文様
  • 第 4 章 写真の探求
  • 第 5 章 異国、そして日本への関心と染織作品への応用
  • 終章 世紀を超えるデザイン

最初の展示室には、彼が幼い時に描いた絵画や、彼の自画像・写真が展示されている。
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父を早くに亡くしたが、母方の祖父もプラド美術館の館長を務めた画家でもあった芸術一家。マリアノ・フォルチュニにもパリに移住後すぐに、幼い頃から絵画を学び始めた。
さらに十代で写真機を手にし、写真家としての道も進み始める。
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好奇心旺盛な彼は二十代になると舞台の世界に惹かれていく。そして、舞台美術や照明技術にもその才能を発揮していった。ドーム型テントのような舞台空間を作ってみたり、遠隔式による照明操作装置なども発明している。拡散光と間接照明を取り混ぜたその照明は画期的なものであった。
その遠隔操作照明装置の“設計図”が展示されているのだが、解読はなかなか難しそう。
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そして、ファッションデザイナー、染織家としても同時期に活躍を始める。
その頃、ギリシャの古代遺跡から一体のブロンズ像がほぼ完全な姿のまま発掘される。紀元前五、六世紀のもので、発掘場所から「デルフィの御者」と呼ばれた。その像が着ていた服装から着想を得て開発されたのが、一枚目の写真にある「デルフォス」と名づけられたドレスだ。それまで、女性のドレスと言えばコルセットを嵌め、パニエで膨らませたスカートが主流だった。そこに、身体のラインを強調したドレスの登場。さぞや世間を騒がせたことだろう。さらには、嵩張ることなくクルクルッと丸めた形でしまっておけることも、当時としては奇跡のような存在。専用のボックスに入って販売されたが、そのスタイルも画期的だった。
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「デルフォス」に用いられているプリーツの技法は門外不出だったため、今では再現不可能になっているそう。もちろん、普通に洗濯してしまっては形が崩れてしまう。そのため、販売に当たっては「洗濯は当店で引き受けます」との注意書きが添えられていたそうだ。
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染織家としても熱心だった彼は、世界各地から技術やデザインを学んだ。日本の伝統工芸からも色々な技術を吸収していて、柿渋染めの型紙なども実際に購入・利用している。
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機織り機を設計・製作する傍ら、模様は手作業で染め付けることもやっていて、美術品としての価値も持つ、産業生産品を生み出していった。展示品では、機織り機の設計図や、染織のための型(ハンコのようにして使ったらしい)などをみることができる。
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第二次大戦のせいでパリの店は閉店となってしまったが、現在も代理店がニューヨークにあり、商品の購入が可能。上記の通り、「デルフォス」そのものは購入できないが、テキスタイル技術を使った織物や、ランプなどが購入可能とのこと。
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★ 感想

この方、とにかく守備範囲が広すぎ。そのため、展示されているものが何を意味するのかちょっと分かりにくいものも。絵画が並んでいたかと思うと、いきなり「舞台照明の遠隔装置の設計図」が出てくると、一人の人間がどちらも作ったんだとすぐには理解できない。もちろん、頭で分かっているものの、感覚的に“入ってこない”感じ。なので、じっくりと説明書きを読み、可能ならば音声ガイドを利用すると良いでしょう。まとまって説明してくれると、きっと納得できますよ。私も学芸員さんの説明を聞いて、こういう人物なのかと理解した上で改めて作品を鑑賞した次第。「芸術作品に説明は要らない。作品そのものを見て、好きに解釈すれば良い」と普段は思っているのですが、“万能の天才”を相手にする時、凡人はそれでは厳しそう。
だが、一旦、自分なりに飲み込めたら、マリアノ・フォルチュニの世界の広さ・深さを、色んな形で楽しめた。舞台装置を見れば、どんな作品が上映されたのか想像してみたり、照明器具を見れば、これなら我が家でも使えるかななんて考えたり。残念ながらドレスに関してはどれも素敵なものばかりなのだが、この細さじゃ我が家の住人は誰も着られないな、、、などと“諦めて”みたり(元より、値段的に絶対に無理ではありますが)。

それにしてもすごいですね、百年近く経ってもマリアノ・フォルチュニのブランドは“現役”で、ちゃんと店舗も構えて商品を売っているんですから。流行り廃りの波がものすごいスピードで荒れ狂っているファッション業界にあって、まさにレジェンド。
ちなみに、そんな超高級店にあって我々が何とか手にできそうなものとしては、テキスタイル模様をあしらったノートらしいです。それでも一冊一万円だそうですが。。。ランプだと、小さな奴なら五万円から。ふぅ。。。まあ、美術品として美術館で眺めるだけにしておきましょう。

なお、展示室の一箇所だけ「ここからならば撮影オーケー」というコーナーが設けられています。ちょっと展示品からの距離があるので、「デルフォス」のきれいなプリーツを撮りたければ望遠レンズが必要そう。。。
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★ 美術展情報

「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン」展は下記の通り、開催中。




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コメント 2

JUNKO

多彩な方なんですね。ご自分ではなにが一番好きなんでしょうね。
by JUNKO (2019-08-03 23:03) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
彼が撮った写真のネガは一万枚。アルバムも百冊が残っているそうです。“趣味”としては写真だったのかなぁ。
by ぶんじん (2019-08-04 08:46) 

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