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「月光ゲーム Yの悲劇 '88」 大自然の中に密室出現 私には犯人、分からなかった・・・ [読書 : 読んだ本の紹介]

月光ゲーム.jpg

★あらすじ

主人公の有栖川有栖は推理小説好き。京都の大学に入学し、推理小説クラブに入部した。部長の江上の他、部員は二名。アリスを入れて四人の男だけのクラブだ。そんな彼らが合宿と称し、キャンプをすることになった。やって来たのは矢吹山。昔はキャンプ場として賑やかだったが、今は寂れてしまっている。
だが、彼らが麓までやって来ると、東京の雄林大学、そして神戸の神南学院短大からもキャンプをすべく、学生達が集まっていた。行き先は同じ。彼らはすぐに意気投合した。

キャンプ場ではそれぞれのチームがテントを張ったが、食事やレクリエーションは一緒。最初の夜には盛大にキャンプファイヤーが行われた。余興として催されたのは、アリス達の“指導”によるマーダー・ゲーム。犯人当てのゲームだ。彼らは大いに盛り上がった。

だが、楽しかったのはその夜だけだった。翌朝、矢吹山が突然、噴火したのだ。火山弾・火山礫が飛んでくる。火山灰で空が覆われてしまう。そして、崖崩れがそこら中で起きる。彼らの登ってきた道は塞がれてしまう。山頂のキャンプ場は孤立してしまい、彼らは大自然が造った“密室”に閉じ込められてしまったのだ。

そして、悲劇は続く。噴火の少し前、神南学院短大の山崎小百合が書き置きを残して姿を消していた。さらに次の朝、雄林大学の戸田文雄が刺殺体で発見された。“密室”で起きた殺人事件だ。まさに推理小説の世界。「犯人はこの中にいる」という状態になってしまったのだ。ミステリー好きの推理小説クラブの四人だが、流石に自分たちが話の登場人物と同じ立場になるとは思っても見なかった。

そして、小説さながらに次の犠牲者が出る。連続殺人だ。自分たちの仲間の中に殺人犯がいる。そして、火山の噴火で逃げ場のない状態。噴火は断続的に続いている。
彼らは無事に下山できるのか。そして犯人は彼らの中にいるのだろうか。。。

★基本データ&目次

作者有栖川 有栖
発行元東京創元社(創元推理文庫)
発行年1988

  • プロローグ
  • 第一章 マーダー・ゲームの宵
  • 第二章 驚愕の朝
  • 第三章 恐怖の夜
  • 第四章 疑惑の日
  • 第五章 下山の時
  • 読者への挑戦
  • 第六章 別れの夜明け
  • エピローグ
  • あとがき

★ 感想

多少のネタバレあり、です。

久しぶりに推理小説らしい、推理小説を読みました。いや、聴きました。耳で読む本、オーディオブックのFebeでこの作品の配信が始まったので、通勤途中で“読書”しようと思ったのでありました。
この作品は、一人のナレーターによる朗読ではなく、複数の話者がそれぞれの役を演じているので、ラジオドラマを聞いている感じでした。自然に聞けますね。

著者の名前は知っていたものの(一度聞いたら覚えちゃいますね)、その作品を読んだことはこれまでなく、初めましてでした。なるほど、推理小説が好きなんだなぁというのが良くわかりますね。この作品がデビュー作だそうですが、往年の名作へのリスペクトに溢れていて、楽しんで書いていそう。でも実際は苦労して出版にこぎ着けたようですが、その辺りはあとがきで著者が語っています。

それにしてもデビュー作にしてスケールがでかいですね。密室を作らんがために火山を噴火させてしまうんですから。そして、そんな極限状態故に、連続殺人犯の“動機”に対しても同時に納得感を持たせています。そうでなければ、キャンプしてワイワイ楽しもうという大学生が何人もの人を殺すなんて、なかなか納得行かないもの。
もちろん、最近は「動機に納得のいかない」事件が実際の世の中で頻発していますけど。でも、それを真似ては、サイコサスペンスかホラーにはなるけど、推理小説ではなくなってしまいそう。

言葉遣いが大仰なのも気に入りました。空のことを「蒼穹(そうきゅう)」と呼んでみたり、「貪婪(どんらん)」なんて言葉は久しぶりに聞いた。他の作品を知らないのでみんなこの調子なのか分からないんですが、独特の雰囲気を醸し出していていいですね。舞台というか、ベースになっているのが京都の大学というのがまた合ってます。著者は同志社大学卒なのかな。あの、御所の北に広がるキャンパスが目に浮かぶ感じが。


推理小説、やはり面白いですね。特に、犯人捜しのパターンは色々と考えながら読めるので(聴けるので)、楽しさ倍増です。
この登場人物たちでシリーズ物になっているようなので、続編も読んでみようかな。


オーディオブック版



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「古生物たちのふしぎな世界」 恐竜よりも前に地球に現れたのはこんな連中だった [読書 : 読んだ本の紹介]

古生物たちのふしぎな世界.png

★あらすじ

地球誕生は46億年前とされている。37億年前の地層から、生命活動の痕跡が見つかったとの報告があるが、確定はしていない。はっきり認められているのは34億年前の物だ。
その後、突如として生物は爆発的な広がりを見せる。6億3500万年前から5億4100万年前の、先カンブリア紀(カンブリア紀の前の時代、の意味)末期のエディアカラ紀には、「エディアカラ生物群」と呼ばれる連中が現れた。彼らは骨格や殻を持たなかったため、化石にはその跡だけが残っている。この時代には“捕食者”はまだいなかったのか、彼らはそんなひ弱な身体でも大丈夫だったのだ。
だが、古生代に入り、彼らはほぼ全滅する。新たな動物群が現れたからだ。そして、本書はそんな連中が現れ、そして恐竜の時代が始まるちょっと前まで続いた「古生代(5億4100万年前~4億8500万年前)」の物語である。

この時代からのち、現代に至るまでは大きく「顕生累代(けんせいるいだい)」と呼ばれている。生物がはっきりと確認できる時代という意味。顕生累代はさらに「古生代」、「中生代」「新生代」に分けられている。大雑把に言うと、「中生代」の主役は恐竜で、「新生代」は哺乳類の時代と言える。

「古生代」はさらに古い方から「カンブリア紀」「オルドビス紀」「シルル紀」「デボン紀」「石炭紀」「ペルム紀」の六つの時代に分けられている。
「カンブリア紀」の地球は、南半球に超大陸ゴンドワナ、南半球中緯度にバルティカ大陸、低緯度にローレシア大陸とシベリア大陸があった。といっても、まだ緑の植物は存在していなかったため、陸地は荒野が広がっているだけだった。命の舞台はもっぱら海の中だ。
「カンブリア紀」には、かの三葉虫が現れる。今は絶滅してしまったが、一万を越える種が報告されている、化石の王様のような存在だ。
さらに不可思議な生物がこの時代にはいた。有爪動物のハルキゲニアや、アノマロカリスはカンブリア紀に現れ、栄えた。カンブロパキコーペは複眼を持っていたが、一つ目だった。ヤウニックは四つの並んだ目を持っていた。オパビニアは五つの目と、象の鼻のような芬(ふん・長く伸びた口)(?)を持っている。
我々の生きる現代には、35の「門」に分類される動物たちが知られている。節足動物門、軟体動物門、環形動物門などだ。それらがこの「カンブリア紀」に一気に現れている。
もっとも、化石の記録を見る限りの判断であって、「カンブリア紀」以前にも彼ら(の祖先)はいたかも知れないが、化石が見つかっていないので判断できないのだ。
実際、遺伝子の突然変異の累積などから測定する“分子時計”によると、カンブリア紀よりもさらに数億年古い時代に、この「門」の分散が起きたと推測されている。

哺乳類はまだこの時代には現れていない。その祖先である脊椎動物の中で、魚の仲間のミロクンミンギアが「カンブリア紀」には存在した。彼らは「無顎類」と呼ばれ、その名の通りに顎を持っていなかった。また、鱗もない。獲物を噛むことも、噛まれるのを防御することもできない存在だったのだ。

★基本データ&目次

作者土屋健
発行元講談社ブルーバックス
発行年2017

  • プロローグ-前夜-
  • 第1章 勃興
  • 第2章 節足動物と軟体動物の支配
  • 第3章 革命
  • 第4章 祖先たちの王国
  • エピローグ

★ 感想

グールドの「ワンダフル・ライフ」で一躍有名になったカンブリア紀の生物たちだが、その後の研究でだいぶ“不思議さ”は減っていった。だが、それでも現生動物のボディプラン(身体の構造)とは異なった彼らの姿には興味が尽きない。
さて、スターダムにのし上がったアノマロカリスやハルキゲニアだが、彼らに続く古生代の生物にはどんなのがいたのか、いつ現れ、そして消えていったのか、実はよく知らなかった。そんな辺りを本書は分かり易く概観してくれている。
特に、両生類がついに地上へと歩みを始める辺りは面白かった。こんな巨大な両生類がいて、その時代には食物連鎖の頂点に君臨していただろうといわれているなんて。今の蛙やサンショウウオからは想像できない。
爬虫類も、何でこんなにずんぐりむっくりした体つきだったのか不思議さ一杯。頭があんなに小さくて、胴体はでっぷりしているなんて。お腹が邪魔で、地面に顔を持って行けない、つまりは水を飲むことができない構造だったのだ。靴下を履くのにお腹が邪魔になる私としては、やけに親近感が沸いてくる。両生類・爬虫類というと“そんなの知っているよ”と思いがちだが、当時のご先祖様は“ワンダフル・ライフ”と同じくらいの不思議さを持っている。いやぁ、興味は尽きませんね。

恐竜たちに比べると馴染みの薄い連中の話ですが、著者の軽妙な喋り(?)のお蔭で飽きることなく読めます。また、再現図(挿絵)はカラーで、不思議な体つきの彼らの姿を分かり易く伝えてくれています。
さらには巻末の文献一覧も充実しているので、入門書としてグッド。まずはこれで概観し、その後は文献にも紹介されている、私も読んだことのある「絶滅古生物学」」や「エディアカラ紀・カンブリア紀の生物」などに進んで行けば興味は倍増しますよ。

おすすめの一冊です。

電子版 「カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史 (ブルーバックス)



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「興亡の世界史 通商国家カルタゴ」 あの時、ハンニバルがローマへの進撃をやめなかったら。。。 [読書 : 読んだ本の紹介]

通商国家カルタゴ.jpg

★あらすじ

紀元前1200年からのちの百年間、オリエント(今の中東の辺り)では青銅器時代から鉄器時代へと変容を遂げていた。その地に現れたのが「フェニキア人」。「フェニキア人」とは、ギリシア人たちによる呼称。ギリシアの東方から通商を目的にやって来た人々をこう呼んだ。元々は「フォイニクス」という、「フェニキア人」たちの特産品であった赤紫の染料の名前に由来する呼び名だ。ここからも、「フェニキア人」は海を越えて通商を行う人々であったことが分かる。以後、数百年の間、地中海はフェニキア人の海となっていく。
フェニキア人はアルファベットを生み出したことでも知られる。シナイ半島で元となる文字が使われ出したが、バラバラであった書式を統一したのが彼ら。彼らは通商を通してその文化も広めていった。だが、残念なことにパピルスや羊皮紙が公文書を残す主な媒体だったため、現在までに残っているものはない。
彼らの土地・国はレバノン山脈の西側、海に面した地。そこがフェニキア“本土”だ。ビュブロス、シドン、テュロスなどの都市が築かれた。そしてここから地中海へと出て行く。旧約聖書によると、テュロスの交易相手国はイオニア、ロドス島、イスラエル、ダマスクス、シェバ(紅海に面する都市)などなど。

そんなフェニキア人たちは、地中海に浮かぶ島々や、大陸の海岸線に、貿易の中継地としての都市を次々と建設していく。その一つが「カルタゴ」だ。
現在のチュニジア共和国の首都チュニスの近く、北アフリカ海岸に、船の碇のような形の岬が突き出している。そこに建設されたのがカルタゴ。フェニキア人たちがアフリカの原住民達から“租借”した土地で、実際に前五世紀までは毎年の貢租が支払われていたらしい。
カルタゴ建設時期に関しては、伝説では紀元前十二世紀のこととなっているが、諸説有り確定していない。考古学的には前八世紀後半の頃らしい。
カルタゴは、フェニキア“本土”のテュロスと、ジブラルタル海峡の先のイベリア半島南部の鉱山(銀・金・銅・錫・鉛)とを中継することでその地位を高めていく。初めは他の中継都市の一つであったが、軍事力を付けていくことにより、一歩、抜きん出ていく。
そんな中、フェニキア本土で大きな動きがある。アッシリア帝国が崩壊し、混乱の時代へと入っていったのだ。その機に乗じ、カルタゴはさらに力を付けていく。かのローマに対しても通商条約を結ぶなどして、海上帝国の地位を高めていった。かくして、地中海はカルタゴの海となったのだ。

★基本データ&目次

作者栗田伸子, 佐藤 育子
発行元講談社
発行年2016 (講談社学術文庫版)

  • 学術文庫版へのまえがき
  • プロローグ――地中海史の中のカルタゴ
  • 第一章 フェニキアの胎動
  • 第二章 本土フェニキアの歴史
  • 第三章 フェニキア人の西方展開
  • 第四章 カルタゴ海上「帝国」
  • 第五章 上陸した「帝国」
  • 第六章 カルタゴの宗教と社会
  • 第七章 対ローマ戦への道
  • 第八章 ハンニバル戦争
  • 第九章 フェニキアの海の終わり
  • エピローグ
  • 学術文庫版のあとがきにかえて
  • 参考文献
  • 年表
  • 人名・著作家名一覧

★ 感想

2009年に出版された「興亡の世界史」シリーズの一冊だったが、このシリーズが講談社学術文庫として再編・再出版されている。名前の通り、「最後は滅亡した」「歴史から姿を消した」国々の話を集めたシリーズなので、“読み物としての結末”は分かっている。そもそも、カルタゴがハンニバルの活躍空しく、三回のポエニ戦争の末に、文字通り地上から消されてしまったことは学校の世界史で勉強した通りだ。
そのため、彼ら自身が残した歴史的資料は乏しい。「歴史は勝者のみが語る」例に漏れず、カルタゴの研究も主にローマやギリシアの側に残された資料に頼っている。そんなハンディを負いながらも著者達研究者はカルタゴの姿を闇の底から引き上げてくれている。

学校で習ったものの、カルタゴがそれほどにすごい国だとは良くわかっていなかった。だが、まさに地中海の覇者であり、貿易を独占して栄えた強国だったことを本書で再認識した。「それにしてもカルタゴは滅ぼさねばならない」と演説のたびに訴えたというローマの大カトーの言葉の切実さもやっと理解できた感じだ。

それにしても、二千年以上前に地中海には貿易ネットワークが張り巡らされ、ハイウェイさながらに船が行き来していたとは。ヨーロッパ、アフリカ、中東と聞くと、今の時代ではどうしても“別々”という印象が強くなってしまう。だが、フェルナン・ブローデルが語るように、地中海を介して全ては繋がっていたんだなということも良くわかった。イベリア半島の銀山による“シルバーラッシュ”はこのネットワークなくしてあり得なかっただろうし、文化面でもアルファベットが広く普及したのもこのお蔭。うむ、壮大な話だ。勉強になりました。


それにしてもハンニバルさん、ローマを目前にして足踏みしてしまったのはなぜなのだろう?講和条約を結ぼうとしたのだろうけど、あと一歩、兵を進めていたらその後の世界は全く異なったものになっていたんでしょうね。


それにしてもこの「興亡の世界史」シリーズ、日本人の“好み”に合っているなぁ。滅びの美学、判官贔屓の心をくすぐられます。次はどれを読もうかな。

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