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美術 : 美術展、写真展紹介 ブログトップ
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「浅井忠の京都遺産」展 @ 泉屋博古館分館 : デザイナー育成にかけた晩年 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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住友コレクション 泉屋博古館分館で9/9から開催される特別展「浅井忠の京都遺産」展のブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別な許可をいただいて写真撮影しています。

★ 展示内容

以下、学芸員さんによるトークイベントの内容を盛り込んでの説明です。

浅井忠は工部美術学校でイタリア人画家フォンタネージに師事し、日本の初期洋画界の代表的画家の一人となる。フォンタネージはバルビゾン派の画家であったため、浅井忠の描く作品も重厚なものが多かった。そのためか、新しい印象派の技術を身につけて帰国した黒田清輝の方が評価が高くなり、新たに設立された東京美術学校の教授就任も数年の後れをとる。
転機が訪れたのは、パリ万博視察。浅井忠はその場で、京都高等工芸学校設立準備をしていた岩澤と知り合う。岩澤から教授就任と、併せて学校の学生達向け教材としての美術品買い付けを依頼され、これを引き受けた。

今回の展示は、浅井忠がパリ万博から持ち帰った品々、画家としての作品、そして京都高等工芸学校でのデザイナー・デザイン教授に関連した作品から成っている。展示構成はその順に、以下のようになっている。
  • Ⅰ はじまりはパリ、万国博覧会と浅井忠
  • Ⅱ 画家 浅井忠と京都洋画の流れ
  • Ⅲ 図案家浅井忠と京都工芸の流れ
  • 特別出品(住友家第15代当主春翠が審査員を務めた、日本の勧業博覧会出品作品を展示)

当時のヨーロッパはアールヌーボーの時代。デザインの“教材”となる作品は多数あった。中でも有名なものは、アルフォンス・ミュシャ(チェコ語の発音だとアルフォンス・ムハ)の「椿姫」などのポスター。
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パリから(船旅で)持って帰らねばならなかったこと、教材として数多くの作品が必要だったことも有り、買い付けた作品は小品が中心だった。
その中から、ショワジー・ル・ロワの陶芸作品、ルイス・C・ティファニーのガラス器などが展示されている。
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印象派の黒田清輝に比べて“暗い”イメージの作品が多かった浅井忠だが、フランスで訪れたグレー村の明るい、牧歌的な風景に感化されたのか、作風も変わっていった。
現地で写生した作品が並ぶ。
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京都高等工芸学校では主にデザインを教えていたが、宮内省(?)から東宮御所を飾る作品の製作を依頼される。実際の作品はタペストリーで、浅井忠はその原画を担当した。
ヨーロッパの貴族の間では、騎馬像、狩猟像をを飾るのがステイタスとなっていた。それに倣い、皇室の威厳アップを意図して騎馬武者の絵を描いた。白髪の老武者を含め、三人の武者が並ぶ図は、祖父・父・息子をイメージし、皇統が長く続くようにとの意味を込めたものだ。
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デザインを教えるにあたり、フランスからムハ(ミュシャ)のデザイン画帖を持ってきたり、自らデザイン集を作っている。
京都高等工芸学校からそれらを引き継いだ現在の京都工芸繊維大学では、当時の学生達の作品も多く収蔵されている。その一部も今回、展示されていて、そのレベルの高さも分かる。
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浅井忠のデザイン画はオリジナリティが高い。フランスで身につけた技術を元に、題材は日本の、京都の文物・文化・風俗に求めたものが多い。
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猪をモチーフにした螺鈿の飾り箱。そのデザイン画と共に展示されている。
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★ 感想

黒田清輝の名前は私でも知っているけど、浅井忠は今回の企画展で“久しぶりに思い出した”レベル。明治初期の洋画家というイメージでした。なので、デザイン家・デザインの先生としての浅井忠に関してはお初。

京都でデザインを教えていたというのがなるほど、という感じ。京都と言えば、水力発電所を国内で初めて造り、それによって西陣の繊維工業を一気に近代化した、産業革命の地でもある。ハード面だけではなく、西陣織やその他の工芸品に対してのソフト面(デザインなど)にも力を入れていたんですね。流石です。
そう思うと、急に浅井忠(とその作品)が身近に感じられるようになった。誰もがフランス留学して勉強できる訳ではないのだから、教育体制を整えるのは重要。自ら“教材”買い付けまで行い、教科書(デザイン画集)を作成して教育に臨んでいたのだから、美術の世界だけではなく、産業界に対しての貢献度は非常に高い。

それにしても、それまで日本の“伝統”工芸品ばかり見ていた学生達は、ヨーロッパの作品を実際に目にした時はどんな風に感じたのだろうか。しかも、実際に手に取ってじっくり観察もできただろうから、舐め回すように観察したんだろうな。
展示されている、いかにもアール・ヌーボーって感じの、草花をテーマにした学生のデザイン画を見ると、すぐに技術や“感性”を吸収し、自分のものにしていったことが分かる。みんな、頑張って勉強したんだろうなぁ。

今回の企画展は、芸術品の作品を観られるのももちろん、そんな産業革命の歴史も学べる一挙両得(?)なのでした。
会期が一ヶ月ほどしかないので、Don't miss it ! です。

★ 美術展情報

「浅井忠の京都遺産」展は下記の通り、開催中。






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「ジャコメッティ」展@国立新美術館 見つめる眼差しは空間をも曲げる [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

「ジャコメッティ」展@国立新美術館 は12点の展示替えもあり、夏休みフェアも実施中 [広告]」で紹介した「ジャコメッティ」展に、Windamさんから招待券をもらって観に行ってきました。

展示構成は、ほぼ年代順 + テーマ別という感じ。彫刻にかけたジャコメッティの生涯を外観することができる。構成は以下の通り。
  1. 初期・キュビスム・シュルレアリスム
  2. 小像
  3. 女性立像
  4. 群像
  5. 書物のための下絵
  6. モデルを前にした製作
  7. マーグ家との交流
  8. 矢内原伊作
  9. パリの街とアトリエ
  10. 犬と猫
  11. スタンパ
  12. 静物
  13. ヴェネツィアの女
  14. チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト
  15. ジャコメッティと同時代の詩人たち
  16. 終わりなきパリ

「初期・キュビスム・シュルレアリスム」では、画家であった父の影響で自らも芸術の道に進み始めた頃の作品が並ぶ。
“コンポジション”などの作品は、まさにキュビスム。立方体、直方体(つまりは煉瓦のような形。でもブロンズ製)を組み合わせた作品が並ぶ。

モデルを前にして作品作りを始めたジャコメッティ。だが、そのモデルの姿・形状を見つめれば見つめるほど、空間と対象との関係性が“凝縮”していったのか、出来上がった「小像」は本当に小さなものになってしまった。これらもブロンズ製なのだが、余りに小さいため、作成途中で壊れてしまう(小刀に入れる力を誤るとすぐに崩れてしまったとか)。結果、後世に残せた作品は僅か。

「モデルを前にした製作」に苦労するジャコメッティ。“モデルの顔を「見える通りに」捉える”ことを目指した彼だが、今度はできた作品がどんどんと細長くなってしまう。また、デッサンをしている時にちょっとでもモデルが動く(微妙に表情を変える)だけで「見える通り」のものが変わってしまう(ように彼には見えた)。そのため、デッサンに描かれた線は何重にもなっている。ちょっと動く・変わるたびに線を描き換える・描き足していくからだ。特に顔、さらには目にその特徴が出ている。ジャコメッティの描くデッサンの目は異様。

ちょっとでも動くと「あぁ!」と声を上げて残念がるジャコメッティ。デッサンを仕上げるのに何週間も、時には何ヶ月もかける。そんな製作に付き合える・耐えられるモデルはそうはいなかったようだ。そのため、ジャコメッティのことを理解してくれる人じゃないとモデルは務まらない。
そんな中の一人に、「矢内原伊作」がいた。哲学者・評論家である彼はジャコメッティと親交を深め、多くの作品のモデルとなっている。彼が取っておいたため、ジャコメッティの製作にかける情熱とも、執拗性とも言える面を知ることができた。新聞紙やチラシなど、そこらにある紙に矢内原伊作の顔をデッサンした下絵・習作が多数残され、今回展示されている。アトリエでしっかりとした形で描く習作だけではなく、時間があればところ構わずどこででも描いたのだろう。そのデッサンに描かれた矢内原伊作の顔・目は、例によって何重にも線が重なっている。

★ 感想

横顔はそんなに違和感がないのに、正面から見ると極端に細くデフォルメされている。彼の目には人がこのように見えるのだろうか。

目の位置、傾き、表情、視線の方向などに極端にこだわっている。デッサンや肖像画を観ても、目の部分に何重にも線が描き込まれている。何度も何度も輪郭を捉えようとした跡なのだろう。
手ぶれ補正機能付きのカメラを貸してあげたくなる。

一転して、リトグラフのデッサンのために描いた作品は即興的だ。ペンが違うそうで、書き直しができない(非常に難しい)ため、このような描き方になるのだそうだ。
その手法で描かれた人物たちはそれ故、動きが非常に強く感じられる。そして、そこに物語性が生まれているように思えた。詳細に描かれたわけではない背景のため、余計にそれを想像で補う余地が生まれ、観る側が勝手にストーリーを想い描けるのだ。このシリーズが私は一番気に入った。男女が街角で偶然に出逢い、ぎこちない会話を始めた瞬間だとか、客室が並ぶホテルの廊下を歩く男と、角に隠れている女。なんか、そんな物語を勝手に作ってしまった。

サルトルが「人間の実存を表現したものだ」と語ったという、このひょろながの人物像。目鼻立ちに拘ったジャコメッティ。つまりは、人の本質とは「顔」ということなのだろうか。胴体や手足はそれにひょろひょろっとぶら下がっているだけの付属物なのだろうか。それとも我々は、夏の日の陽炎のようなフワフワと漂う存在なのだろうか。
そういえば、先端恐怖症の人が見たら悲鳴を上げそうな、鼻がやたらと伸びた頭部だけの像もあったな。なぜか頭が吊されていて、髪の毛(?)と伸びた鼻との重量が釣り合っているあの像。つまりはあれだけで良かったのか。

色んなことを考えさせられる作品群だった。暑い日が続くけど、観に行くべきですよ、これ。
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★ 美術展情報

「ジャコメッティ」展は下記の通り、開催中。
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「生誕140年 吉田博」展@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 モダンな浮世絵ですね、これは [美術 : 美術展、写真展紹介]

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「生誕140年 吉田博」展@東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 [広告]」の記事で紹介した「吉田博展」を、Windamさんから招待券をもらって見てきました。

★ 展示内容

明治から昭和にかけて風景画の第一人者として活躍した吉田博(1876‐1950)の生誕140年を記念しての企画展です。

公式サイトの説明によると、
「絵の鬼」と呼ばれ、水彩で、油彩で、木版画で世界に挑み続けた画人。ダイアナ妃や精神医学者フロイトも魅了した。
自然美をうたい多彩な風景を描いた吉田博は、毎年のように日本アルプスの山々に登るなど、とりわけ高山を愛し題材とする山岳画家としても知られています。制作全体を貫く、自然への真摯な眼差しと確かな技量に支えられた叙情豊かな作品は、国内外の多くの人々を魅了し、日本近代絵画史に大きな足跡を残しました。
とのこと。

期間中に一度(7/31の休館日だったのかな)、展示替えがあり、今は後半の展示内容になっています。後期は181点が展示されていて、うち66点が後期のみの展示(前期も181点展示。うち66点が前期のみ)。
展示構成は年代順になっていて、以下の通り。
  • 第一章 不同舎の時代:1894-1899
  • 第二章 外遊の時代:1900-1906
  • 第三章 画壇の頂へ:1907-1920
  • 第四章 木版画という新世界:1921-1929
  • 第五章 新たな画題を求めて:1930-1937
  • 第六章 戦中と戦後:1938-1950
  • 資料

久留米出身の吉田博は、子供の頃からの画才を認められ、上京して画塾「不同舎」に入門する。その頃に描いた鉛筆画、水彩画は精緻な描写で、さらに技術を増していく。
のちに明治美術会の会員となり、仲間と共に渡米。さらにはヨーロッパ各地も巡り、パリ万博にも出展、米国に戻り日本画家水彩画展を開催している。海外でも認められる存在となり、いくつかの賞も獲得していく。

版画の版元と知り合ったことをきっかけに、木版画を始める。以降、木版画を中心とした創作活動を精力的に行っていく。大判でで、多色刷り(数十回?)の作品が多く、特に富士山を描いた作品などは浮世絵(葛飾北斎?)の影響が感じられる。

会場では多色刷りの工程を解説するビデオも上映されていて、どのようにしてこれらの作品が出来上がっていったか(以下に大変か)が分かるようになっている。

★ 感想

子供の頃のスケッチブックが最初に展示されていますが、いきなり「これは神童だ!」と感心させられました。いやぁ、旨い。その後の鉛筆画は、「「レオナルド×ミケランジェロ展」@ 三菱一号館美術館 ライバル同士のバトル勃発! 日本初の試み」の記事で紹介した、レオナルド・ダ・ビンチやミケランジェロとはまた違うものの、素描の正確さは並ぶものがある気がします。まあ、素人の私の“評価”ですが。
でも、確かに旨いんですが、鉛筆画や水彩画にはあまり惹かれるものがなかったのも確か。これは私の趣味ではないということで、作品の価値云々ではありません。なんというか、旨いんだけれどもよくある絵という感じかな。農村の風景画に村娘が一人、描かれていたりしますが、確かに叙情的ではあるけど、まあね・・・という思い。これらの作品がなんで海外のセレブたちに気に入られたのか疑問でした。

でも、その後の版画作品を見て納得。彼らはこれを気に入ったんだな、と。木版画でありながらとても緻密で、色合いも鮮やか。現代版浮世絵とでも言えばいいでしょうか、伝統的様式とモダンなテーマがマッチしていて、とても新鮮なイメージを受けます。
あと、江戸時代の浮世絵と比べるとその大きさも魅力の一つ。木版画でこれだけ大きく、さらには色数もかなり多い多色刷りは、刷るのが大変そう。実際、紙と木(木版)では湿度などに対する収縮率が違うために、ズレてしまうのだそうです。いやぁ、大変そう。
そんな苦労の結晶である作品群ですから、浮世絵好きの人たちにもすんなりと受け入れられたのでしょう。

人気は海外セレブだけではなく、現代の我々の間でも相当なもののようです。会場、かなり混み合っていました。“渋い”企画展が多い東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館に、こんなにも人が集まるとは。吉田博の作品、人気なんですねぇ。
ということで、落ち着いて観たい場合は曜日や時間帯を考えた方がいいかも知れません。

★ 美術展情報

「生誕140年 吉田博」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/7/8(Sat) - 8/27(Sun) 前期:7/8 - 7/30, 後期:8/1 - 8/27
  • 開館時間 : 10:00 - 18:00
  • 休館日: 月曜日 (7/17開館、7/18休館)
  • 料金 : 一般1,200円 大・高校生 800円 65歳以上 1,000円 中学生以下 無料
  • 公式サイト : 吉田博展 | 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
  • 特別キャンペーン:「生誕140年 吉田博展」の期間中、海の日(7/17)と山の日(8/11)に展覧会図録をお求め方、先着100名様に特性ブックカバー(非売品)をプレゼント。
    • 【海の日 7/17】には、海の絵柄のブックカバーをプレゼント:終了しました
    • 【山の日 8/11】には、山の絵柄のブックカバーをプレゼント
  • 参考書 : 「吉田博 作品集
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