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美術 : 美術展、写真展紹介 ブログトップ
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「名刀礼賛 もののふ達の美学」展 @泉屋博古館分館 武士達のコレクションアイテムだね、刀装具は [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

住友コレクション 泉屋博古館分館(六本木)で開催中の「黒川古文化研究所+泉屋博古館連携企画特別展 名刀礼賛 もののふ達の美学」展ブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別な許可をいただいて写真撮影させていただきました。

黒川古文化研究所は、兵庫県の西宮にある美術館&研究機関です。証券業で財を成した黒川家のコレクションを中心に展示・研究を行っているそうで、特に刀剣・刀装具(とうそうぐ)は国宝・重要文化財も多数収蔵。
そんな逸品ぞろいの中から今回、三十振り余りの刀剣が初めてまとまって東京で展示されたのです。そして、そこに住友コレクションが加わり、今回の企画展となっています。

展示の構成は以下の通り。
  • 刀剣
    • 中世京都の刀工
    • 備前刀
    • 刀剣目利きの本阿弥家と名物刀剣
    • 刀剣の伝来と付属資料
    • 新刀
  • 拵えと鐔・刀装具
    • 家彫 ―御用彫物師・後藤家―
    • 町彫の祖・横谷宗珉と江戸の彫物師
    • 生写・一宮長常と京の彫物師
  • 絵画 ―武士が描いた絵画

中世の京都は、台頭した武士達が闊歩する都となった。そのため、刀の需要も高く、供給者(刀工たち)もこの街に集まっていた。
彼らの造る刀・太刀は細身で腰ぞり(グリップの部分で急にそりが強くなるもの)、波紋(刀身の波形紋様)も穏やかなものが多く、優美さを感じる。
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戦乱の世になっていき、刀の需要が高くなっていくと、京都の街では手狭になり、各地で刀の生産が盛んになっていく。そんな中で一大産地となったのが備前。
丁字乱れの波紋と呼ばれる、波形が荒々しく変化する波紋が特徴の一つで、はばき(グリップ(柄)に刀身をはめて固定するための金具)に彫刻を施したりして装飾性も高くなっている。
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装飾性が高くなっていくと、刀は単に武器であるばかりではなく、装飾品であり、贈答品としてもよく使われるようになる。武士同士が贈り物(主人が家来に授けたり、その返礼だったり)として使うようになると、それがどれほどの価値のある品なのかが重要になる。そう、お返しとしていくらくらいのものを贈ればいいのか見極めねばならないのだから。これは、現代で言えばお中元・お歳暮が送られてきた時と同じような感覚なのだろう。
そこで珍重されるようになるのが鑑定士による鑑定と、そのお墨付きとしての鑑定書。中でも本阿弥家は鑑定士としてメジャーとなり、彼らの発行する鑑定書(「折り紙」と呼ばれた)や、カタログ(留帳)は権威あるものとなっていった。「折り紙付き」というフレーズはここから生まれたそうだ。
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刀装具も華やかなものとなっていく。戦国時代では、朱塗りだったり、螺鈿だったりの華美な鞘が流行っていたそうだ。
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だが、江戸時代になると華美な鞘は禁止となる。質素倹約が励行されたからだろう。それでも好き者達はあれやこれやで刀を飾り立てる。鐔(つば)や目抜き(柄に刀身を留めるピン)、笄(こうがい:鐔を留めるピン)など、小物類をこっそりと(?)飾り立てるのだ。小さなその部品に細工を施していく。
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たかが刀の鐔と侮るなかれ。中には重要文化財に指定されているものもあるのでした。
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★ 感想

今年の初め、静嘉堂文庫美術館でも日本刀の企画展が開催された(「静嘉堂文庫美術館 『「超・日本刀入門」~名刀でわかる・名刀で知る~』展 鑑賞ポイントから学べます」を見てください)が、日本刀ブームが来ているのでしょうか?!お蔭で、そんなに詳しくなかった私も、少しずつですが日本刀の知識が増えてきました。太刀と刀の違いなんてのも覚えましたしね。あと、刀身の波紋の“鑑賞ポイント”もぼちぼち。知らないで観ると、それぞれの違いに全く気が付かないんですよ。それが、紋様にも色んなパターンがあると知ってから観ると、その違いが分かってくる。いやぁ、面白いものです。「認識なき直感は無意味である」と言うことでしょう。

自分が普段身につけているものにデザイン性を求め、美しさや精巧さを持たせて自慢する。いや、たしなみ深い武士たちは、あからさまな自慢はせずに、一人悦に入っている感じなのでしょうか。それは現代人のお洒落でも同じ間隔。ブランドものが好かれたり、奇抜なデザインが流行ってみたり。元々は人を殺めるための武器ではあるのだけれど、そんなことを忘れて工芸品として見入ってしまいます。なるほど、日本刀って美しいものですね。

とは言え、何度も研がれたのか、かなり細身になっている刀身も展示されていて、これはかなりの回数を“実戦”で使用されたのだろうなと思い起こさせてくれるものもあったり。ふとそれに気づいて、ドキッとしてしまいます。


刀装具、本当に小さくて、細工が細かい。じっくりと目を凝らして観賞してください。武士たちの粋と、職人の技を感じさせてくれます。
でも、なんでこの刀の鐔が重要文化財で、こっちは違うのか、まだまだ違いが分からないのでありました。うむ、奥が深い世界です。

ということで、黒川古文化研究所のお宝、一見の価値ありです。

★ 美術展情報

「名刀礼賛 もののふ達の美学」展は下記の通り、開催中。

刀装具はかなり小さなものですし、そこに細かな細工が施されています。なので、単眼鏡の貸し出しもしてくれるそうです。これ、いいですね。私もマイ単眼鏡を持っているんですが、いざという時に忘れてしまうことが多く、その場で貸し出してもらえるとグッド。
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「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展 まだまだ知らない顔を持つインドを垣間見る [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展を観てきました。

★ 展示内容

本展は、インドの写真家ダヤニータ・シンの作品をテーマ別に構成した企画展。
公式サイトの説明によると、
ダヤニータ・シンの作品は視覚的な小説とも呼べるような、ドキュメンタリーとフィクション、夢と現実、不在と実在が綯い交ぜになったユニークな世界を展開しています。近年は移動式の「美術館」を考案し、全体を〈インドの大きな家の美術館(Museum Bhavan)〉と名付けました。詩的で美しい世界のなかに、現代写真・美術が抱える美術館システムやマーケット等の問題、現代社会におけるセクシュアリティや、格差、階級、ジェンダー、アーカイブ、情報等の様々な問題が示唆されています。また、従来の写真や写真集という概念を軽々と超えて、写真というメディアの新たな可能性を切り開いています。彼女の作品は今後の写真のあり方を考える上でも示唆に富むものです。
とのこと。世界的にかなり有名な写真家とのことですが、ごめんなさい。私は“初めまして”でした。

テーマ別展示は下記の通り。
  1. マイセルフ・モナ・アハメド
  2. 第3の性(ポートフォリオ)
  3. 私としての私
  4. セント・ア・レター
  5. ミュージアム・オブ・チャンス
  6. ファイル・ミュージアム
  7. リトル・レディース・ミュージアム 1961年から現在まで
  8. ミュージアム・オブ・シェディング
  9. タイム・メジャーズ
  10. モナ・アンド・マイセルフ
  11. スーツケース・ミュージアム
「ミュージアム・オブ・チャンス」などが“移動美術館”仕様で展示されている。折りたたまれる分が細くて、折りたたみ数が多い、“屏風”のようなものを想像すればいいでしょうか(想像しにくい?!)。各作品はスクエアだったり、横長だったりと、色々。パタパタ“屏風”にズラリと並んでいる。確かにこれならば移動も可能だし、パッと開いて作品展示が出来るだろう。

★ 感想

ダヤニータ・シンは欧米系メディアのカメラマンとしてキャリアをスタートさせた。だが、インドの貧困の様子やエキゾチックな場面の写真ばかりを求められることに違和感を感じ、アート写真家に転向したのだそうだ。確かに、インドと聞くとどうしてもそんなステレオタイプなシーンが浮かんでしまう。道路を歩く牛や、その脇で寝ているのか死んでいるのか分からない人がいたり、そんな光景がインドの印象だ。

単純に人口が多いから、他の国と割合が同じだとしても、絶対数は膨大なものとなるのだろう。LGBTをテーマにしたのは頷ける。
とはいえ、LGBTと言うと化粧をした”男性”を被写体に多く取り上げるのはいかがなものか。それこそステレオタイプなんじゃないかな?と思ってしまう。派手な化粧をするのはLGBTではない人にも当然、いるし、性を商売にしている人も少なからずいるだろう。そして、誰もが商売を抜きにした日常生活ではノーマルな化粧をして、もしくはスッピンで暮らしているだろう。LGBTだからといって、ことさら性を強調した感じではないと思う、日常の中では。
そんなこんなで、この作品群はちょっといただけなかった。

中国四千年の歴史、とはよく言われるフレーズだが、インドの歴史はざっとどの程度なのだろうか。それを思うと、”ライブラリアン(司書)”って特別感がある印象を受ける。歴史の証人、語り部、伝承者。山のように積まれ、無造作に束ねられた、中身がなんだか分からない書類の束を背景にしたそんな人々の姿は神秘的でもある。
そんな棚にはインデックスがどこにも貼られていないように見える。となると、どこになにがあるかはライブラリアンの頭の中だけに存在するのだろうか。記憶と記録の同一性。であれば、遙か太古の歴史もその中に納められているのかもしれない。そんな想像をさせてくれるシーンだ。

可動式美術館と言う発想も、そんなシーンの延長と思えば必然だったようにも見えてくる。語り部は人の集うところならどこでもその話を始められるだろう。そして、ダヤニータ・シンは同様に自分の作品を人の集まる場所でぱっと広げてみせる。作品のテーマと重層的な展開がとてもおもしろい。

森美術館で観た「N.S. ハルシャ」展(「「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」 インドの現代アート作家の不思議な世界」)といい、現代インドアートが熱いようだ。確かに、今は乾期だろうから、文字通り暑いだろうな、インド。デリーで40℃の気温を体験したことがあるが、そんな国だからこそ、パッションも気温以上に熱くなっているようだ。

奥が深いな、インド。まだまだ知らない、色んな顔があるようだ。

★ 写真展情報

「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展は下記の通り、開催中。





「ランス美術館展」 そうそう、これがフランス絵画ですよ。納得のコレクションです [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

ウインダムさんから招待券をもらい、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「ランス美術館展」に行ってきました。

公式サイトの説明によると、
ランス美術館は、歴代のフランス国王が戴冠式を行った大聖堂で知られる古都ランス市に位置し、初期ルネサンスから現代まで、幅広いコレクションを有しています。本展覧会はランス美術館の所蔵作品から、17世紀から20世紀まで、選び抜かれた作品約70点を展示、華麗なるフランス絵画の歴史をたどります。
また、ランス市に縁の深い日本出身の画家レオナール・フジタ(藤田嗣治)の作品群も併せて展示します。
とのこと。

展示はほぼ年代順に分けられていて、十七世紀から二十世紀にかけてのフランス絵画の歴史を概観できるようになっています。
展示パートは下記の通り。
  1. 国王たちの時代
  2. 近代の幕開けを告げる革命の中から
  3. モデルニテをめぐって
  4. フジタ、ランスの特別コレクション
  5. 「平和の聖母礼拝堂」のための素描

「国王たちの時代」の絵画は、王家の人々の肖像だったり、ギリシャ神話の神々だったりと、まさに“王道”の作品が並んでいる。ダヴィデやサテュロス、レダが活き活きと描かれ、王宮を飾っていたに違いないと思わせるものばかりだ。

時代は下って十八世紀・十九世紀になると、「近代の幕開けを告げる革命の中から」ウジェーヌ・ドラクロワ、カミーユ・コロー、ギュスターヴ・クールベ、ウジェーヌ・ブーダンなど、お馴染みの画家達が出てくる。彼らは神話や宮殿の世界から抜け出し、フランスの各地、そしてパリの街角に繰り出していく。

「モデルニテ」とは、一般には“現代性”のこと。アルフレッド・シスレーやカミーユ・ピサロは印象主義を追い求め、ポール・ゴーギャンやモーリス・ドニはその後を受けてそれぞれの現代性を追い求めていった。

「フジタ、ランスの特別コレクション」、「「平和の聖母礼拝堂」のための素描」ではレオナール・フジタ(藤田嗣治)が今も眠る「平和の聖母礼拝堂」(ランス市内にあるフジタの発案で建てられた礼拝堂)を飾る壁画の下絵や、ランス美術館に寄贈された彼の作品群が展示されている。

★ 感想

最近、“エッジの効いた”美術展を観ることが多かったせいか、この企画展は“安心して観られる”ものだった。美術の教科書で観た作品と雰囲気が似ているものが多かったからだろう。そう、フランス絵画の教科書のような企画展なのだ。
中世から抜け出してルネサンスを謳歌するような作品群だったり、印象派の絵画だったり、なるほど層だよな、と言うものばかり。


レオナール・フジタの作品群は、あの特徴ある女性像が神話のヒロインだったり、聖母だったりしていてこちらも興味深く観られた。
中でも、彼の描いたサロメには惹かれた。「サロメ図像学」の記事でも書いたように、サロメというモチーフは以前から気になっているもの。美しさ、無邪気さ、そして狂気を合わせ持った少女というイメージのサロメ。フジタの描くサロメは誰のものよりも少女らしい少女だった。一見の価値あり。

フランスにまた行ってみたくなった。その時にはランスの街にも足を伸ばし、ランス美術館やフジタの礼拝堂も訪れてみたい。
憧れのフランス。そのフレーズを思い出させてくれる企画展でした。

★ 美術展情報

「ランス美術館」展は下記の通り、開催中。






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