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美術 : 美術展、写真展紹介 ブログトップ
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「かおりを飾る 珠玉の香合・香炉」 展:当時のコレクター心をくすぐる品々ばっかり [美術 : 美術展、写真展紹介]

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Windamさんの招待で、静嘉堂文庫美術館で開催されている「かおりを飾る 珠玉の香合・香炉」展の、ブロガー内覧会に参加してきました。
特別な撮影許可をいただき、写真を撮ってます。普段は撮影禁止です。

★ 展示内容

公式サイトの説明によると、
古くは仏前に芳香を献ずるものであった香の文化は、インドや東南アジアから仏教伝播とともに広がり、わが国へ伝えられました。香合(こうごう)・香炉(こうろ)は、香道具としても発展し、茶道具にもとり込まれていきました。
“茶の湯”で炭点前(すみでまえ)に用いられる姿愛らしき「香合」は、茶席に飾られる機会も多く、格別人気の茶道具です。江戸初期よりその種類はじつに多様となりました。
とのこと。

仏前で焚く香炉というと、柄の付いたこんな奴を思い浮かべます。これ、平安時代のものだったかな。かなり古いものだそうです。香りでその場を清める意味合いがあるのだとか。
その後、今でいうとアロマポットのような感じで、動植物をモチーフにしたり、椀のような実用性のある形状だったりと進化していった。
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青磁の香炉。人だったり、家だったり、動物だったり、モチーフは色々。
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一方の香合は、貴重品である香を入れておくケース。元々は香専用という訳ではなく、装飾品や化粧品などを入れるための器だったものが、香道や茶道の発展を通して専用具として確立していった。
女性の教養として尊ばれたところから、大名の輿入れ道具(花嫁道具)などとしても発展していき、豪華な“セット”も造られた。
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江戸時代、コレクションの対象となっていった香合は、江戸っ子の大好きな“番付”(今でいう「ランキング」)が作られていき、その価値がさらに定着し、整理もされていった。
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この番付に出てくるのは輸入品が主だが、国産品も合わせて、どんなものが出てくるか列挙すると、下記の通り。
  • 呉州(ごす)(染付・赤絵):福建省沿岸に近い窯で作られたもの。丁寧な造りのものが多く、茶人に喜ばれた。
  • 古染付:明末の景徳鎮民窯で作られた、造りの粗い染付。フチ部分に「虫食い」と呼ばれる釉薬の剥げたカ所があるのも特徴。
  • 交趾(こうち):ベトナムからの「交趾船」で輸入された三彩の磁製香合。実際の産地は中国福建省。
  • 祥瑞(しょんずい):明代末期の景徳鎮窯で作られた海外輸出用染付磁器。丁寧な造りのものが多い。
  • 青磁:言わずもがな。中国宮廷では(曜変天目ではなく・・・)青磁が最高とされた
  • 美濃焼:国産香合の初め。その後、日本各地で作られていく。
  • 京焼:雅趣に富んだ香合が多く製作された。


静嘉堂文庫の創設者である岩崎家代々の当主たちも、主に香合のコレクションを拡充していった。その数、250点以上。
実は上記の番付表に三菱のマークである「◇」が所々にスタンプされている。岩崎さんがゲットして行った品にマークを付けていたのだそうだ。コレクターの喜びは昔も今も、そして対象となるものの違いもなく、同じなんだなと納得。
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モチーフは三聖人だったり、花鳥風月だったり。
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★ 感想

香道はもちろん、茶道にも疎い私には、香炉は知っていたものの香合ってのは初めて知りました。古代エジプトなどでも木香を入れる器なんてのが造られていたのは知っていたんですけどね。灯台下暗し(?)と言えるかな。

実用品とは違う、趣味の品・道具と言うところが、細工を細かくしたり、やたらと造型に凝ったり、奇をてらったりと、どんどんと“遊び”の、“粋”の方向へ進んでいったんだなというのが分かります。いやぁ、面白いですね。レアポケモンじゃないけど、珍しい品をゲットした茶人たちは見せびらかしたくてうずうずしたんだろうな。でも、茶席では格好を付けていなければならないから顔には出さなかったのだろうけど、それがまた“一人ほくそ笑む”感があって良し。

またしても私は忘れてしまいましたが、細工が細かい作品が多いので、単眼鏡を持参されることをおすすめします。
三菱のお宝コレクション、一見の価値ありですよ。

そうそう、今、何かと話題の「曜変天目茶碗」も展示されています。しかも、かなり台座が低く、上からじっくり眺められるので、こちらも観るべき。

★ 美術展情報

「かおりを飾る 珠玉の香合・香炉」 展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/6/17(Sat) - 8/13(Sun)
  • 開館時間 : 10:00 - 16:30
  • 休館日: 月曜日、7/18(Tue) ただし、7/17(Mon)は開館
  • 料金 : 一般1,000円 学生 700円 中学生以下 無料
  • 公式サイト : 静嘉堂文庫美術館 | 開催中の展覧会・講演会
  • ワークショップ
    • 匂い香づくり体験 7/1(Sat) 1回目 10:30-、2回目 13:00-、3回目 15:00-
      所要時間 60分、各回30名(予約優先)、教材費 1,620円(税込み)当日有効の入館券が必要です。
      オリジナルの香を作り、巾着袋に入れて持ち帰れます。
    • 香のしおり作り(子供向け)7/29(Sat) 1回目 10:30-、2回目 13:00-
      所要時間 30分、各回20名(予約優先)、教材費 540円(税込み)当日有効の入館券が必要です。小中学生は無料
      香のしおりを作り、持ち帰れます。







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「世界報道写真展2017」 子どもたちの恐怖に怯える目、直視できない [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で開催中の「世界報道写真展2017」を観てきました。

★ 展示内容

さて、世界報道写真展はWorld Press Photo (世界報道写真財団)によって行われるコンテストの入選作品を集めた写真展です。その名の通り、報道写真を対象にしたコンテストで、前年(2016年)に撮られた作品が中心となっています。「スポットニュース」や「現代社会の問題」など、八つの部門が設けられ、それぞれに単品作品・組み作品から選ばれるのです。その全ての作品の中で一点、大賞も選ばれます。今年は、BurhanOzbilici氏による、トルコで起きたロシア大使暗殺(といっても、衆人環視の中の犯行です)を撮った組み写真が選ばれていました。

大賞作品は、トルコの首都アンカラで開催された写真展のオープニングセレモニーで、駐トルコ・ロシア大使が挨拶をしていたところ、(非番の)トルコ警察警官によって射殺された事件を撮ったもの。犯行直後、倒れる大使の横で左手を高々と挙げ、何かを叫んでいる犯人の姿を捉えています。右手には犯行に使われた銃がしっかりと握られている状態。写真家も巻き添えを食って撃たれるかも知れない中、構図もしっかりしているし、ピントもばっちり。まるで、映画のシーンを撮ったスチール写真のよう。

ポスターにもなっているのは、「自然の部」で入賞した、スペインの写真家フランシス・ペレス氏による作品。本来は魚を捕るための網が身体に巻き付いてしまい、そのまま海を泳ぐウミガメの姿を撮ったもの。絡まった網を取る術をウミガメは持っていない。彼/彼女はこのままでは動きが取れなくなって餓死するか、捕食者に襲われるかしてしまうだろう。漁師にとっては意図しない“事故”もしくは、大事な網を破ってしまう厄介者かも知れないが。

「スポットニュース」、「一般ニュース」の部門は今年も戦争や犯罪に関係する作品ばかり。爆撃によって怪我をした子供が、恐怖の表情そのままで病院(?)で手当を受けているシーンや、自宅が政府軍によって捜索を受けている間、外で震えている少女を撮った作品や、赤ん坊を瓦礫の中から助け出すシーンなどなど。

爆撃などの直接的な戦禍を受けてなくても、自分の暮らしている国で戦争・内乱が起きれば国外に避難するしかない。その人々は難民と呼ばれるようになる。粗末な船の船底に詰め込まれて脱出を図るも、そこで“窒息死”してしまったり、海に落ちて波間を漂う水死体と成り果てたり、無事に陸地にたどり着いたとしても難民キャンプ暮らしが待っている。

★ 感想

いつもならば、他の作品たちに比べて癒しを与えてくれる「自然の部」の生き物たちを写した作品も、今年はシビアなものが多かった。餌を求めて農地に現れたヒョウや、密猟で角だけを切り取られて死んだサイなど、人間との関わりによって“被害を受ける”動物たちを捉えたものばかりだった。網の絡まったウミガメも然り。
客観的に観れば、人間の数が増えすぎ、他の生き物たちの生息域を侵食しているということなのでしょう。人間も自然の一部と思うと、そのうちに“調整”なのか、“フィードバック”なのか、“天罰”なのかが起きそう。まあ、地球温暖化もその一つなのでしょう。

難民をほとんど受け入れしていない日本。でも、世界ではこんなにも深刻な問題なのだと改めて痛感させられた。大元の問題である戦争やら紛争やらをなくさない限り、この問題に真の解決はないのだろうけど、それは人類百万年の歴史を見ても無理な相談らしい。であれば、共にある世界を指向するしかないのだろう。私たちも、まずは異文化を学び、受け入れる術を身につけていかねばならない。もちろん、受け入れるばかりではなく、守ってもらうべきルールや習慣も当然ながらあるだろうから、それを教えることも進めないと。どちらも教育なり何なりの、時間の掛かる取り組みが必要だ。2020年までに、と言う付け焼き刃ではない施策をとらねば。例えば、道徳教育も、国粋主義や民族主義を懐古するようなものではなく、異文化で育った子どもたちに向けて知ってもらいたいものを教えるものと捉えると、ずいぶんと違ったやり方・内容になるんじゃないだろうか。逆に、それを通して自分たちの文化のアイデンティティも見えてくる気がする。

そんなことを考えさせられた今年の報道写真展でした。毎年、(精神的)苦行のような気分になるこの企画展ですが、観ない訳にはいかないと思ってます。

★ 美術展情報

「世界報道写真展2017」は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/6/10(Sat) - 8/6(Sun)
  • 開館時間 : 10:00 - 18:00
  • 休館日: 月曜日 (7/17開館、翌7/18休館)
  • 料金 : 一般800円 学生 600円 中高生・65歳以上 400円 小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
  • 公式サイト : 世界報道写真展2017
  • 巡回 :
    • 2017/8/8(Tue) - 8/17(Thu) 【大阪展】ハービスHALL
    • 2017/8/20(Sun) - 9/3(Sun) 【広島展】イオンモール広島府中
    • 2017/9/6(Wed) - 9/18(Mon) 【埼玉展】イオンレイクタウンkaze
    • 2017/9/21(Thu) - 10/1(Sun) 【滋賀展】立命館大学 びわこ・くさつキャンパス
    • 2017/10/3(Tue) - 10/27(Fri) 【京都展】立命館大学 国際平和ミュージアム
    • 2017/10/30(Mon) - 11/12(Sun) 【大分展】立命館アジア太平洋大学
  • 図録 2,800円(税込み)
  • 参考書(オリジナル版図録)







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「珠玉の現代陶芸 マダム菊池のコレクション」展 菊池智さんの想いを知る [美術 : 美術展、写真展紹介]

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智美術館 - Musee Tomoで開催中の「珠玉の現代陶芸 マダム菊池のコレクション」展 ブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別の許可をいただいて写真撮影しています。

★ 展示内容

今回の企画展は、いわゆる“収蔵品展”です。タイトルの通り、美術館の創設者であり、現代陶芸のコレクターでもあった菊池智さんのコレクションを通し、氏の人となりを知ってもらおうとのこと。また、美術館の歴史についても解説があります。

父親である菊地寛実(かんじつ)氏は炭鉱経営をしていて、徴用で働きに来ていた瀬戸出身の陶工のために登窯を作ったのだそうです。そこに娘の智さんが訪れ(疎開してきたのだそうです。時代ですね)、陶芸の素晴らしさを知るきっかけとなったのでした。そこから智さんは陶芸作品のコレクションを始め、後にギャラリー「現代陶芸寛土里(かんどり)」をオープンさせ、さらにこの世界にのめり込んでいったのでありました。
女性の身でありながら、という表現はジェンダー的に問題ありそうですが、とにかく彼女自身が作品を集め、そしてこのような美術館を建ててしまった人物なのです。すごい方ですね。残念ながら昨年、他界されたのですが、こうして美術館とそのコレクションという形あるものを後世に残してくれたのです。

そんなコレクションから、智さんが気に入っていたり、目を付けていたり、逆に影響を受けたりした作家たちの作品を57点チョイス、展示しています。

中村謹平さんの壺(?)。蓋の部分に不思議な紋様が描かれています。いや、スタンプされているといった方がいいかな。なぜか「る」の文字がペタペタと。どういう意味?!
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富本憲吉さんの飾り箱。使い勝手が良さそう。
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菊池智さんは、日本の陶芸を海外にも知ってもらうべく、米国スミソニアン自然史博物館で美術展を開催したのだそうです。その美術展自体は大成功し、さらに展示デザイナー、リチャード・モリナロリ氏との出会いがこの場であったのも収穫。というのも、智美術館の展示スペースそれ自体のデザインを氏に依頼することができたから。今の形は“二代目”。最初の展示スペースも、二代目もモリナロリ氏が手がけたのでありました。
訪れるたびに思っていましたが、この美術館の魅力はやっぱりこの展示スペース。落ち着きますよね、この雰囲気。そして、作品を生で(ガラスケースに入れられることなく)観ることができるのもポイントが高い。
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加藤唐九郎さんの大皿は、不思議な存在感。ゴツゴツザラザラしているし、フチはひび割れちゃっているし。上手いのか、下手なのか。。。
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川瀬忍さんは、智さんが“若い頃から目を付けていた”作家さんなのだそうです。
この足、こんな格好をしているのに轆轤を使って作られたもの。どうやって?!って感じですし、この長さ(高さ)でバランス良く焼き上げるのもすごいなと。焼き物は、焼いているときにどうしても変形してしまうもの。自立できるほどにきっちり長さを合わせるの、大変そう。
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このような作品の価値をちゃんと見いだしてコレクションに加えた智さん、さすがです。
焼き物で空き缶を作っちゃったり、ハイヒール作ったり。しかも、これまた轆轤で作られているってのがどういうこと?!って感じです。現代陶芸、シュールですな。
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と思えば、深見陶治さんの作品は、陶器というより“セラミック”と呼びたい感じ。こちらは型に流し込んで、さらにはプレッシャーも加えてこのエッジの効いた作品に仕上げているのだそうです。
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ぱっと見に「これ、金属?」と見間違ってしまうのですが、立派な(?)陶器です。でも、何を表しているんでしょうね、これ。私には“フロイト的発想”しか思い浮かばないのですが・・・。
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なぜ陶製の“椅子”が必要だったのか。いや、必要性があったからと言う訳ではないでしょう。キャスターっぽい足まで付いていて、ちょっと曲がっているところは芸が細かい。もちろん、陶製なので動きません。用の美とは良く言うけど、使えそうで使えないのはどう扱えばいいのでしょう。現代陶芸、奥が深い。
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★ 感想

作品とともに、菊池智さんや美術館の説明書きもパネルとして展示されています。それを読みながら改めてこの展示スペースを眺めると、一人のコレクターの生き様が静かに、でもしっかりと見えてくる気がします。
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そう言えば、この美術館の学芸員さん、スタッフさん達はみなさん女性。それもこだわりなのかな。


陶芸に限らず、“現代美術”って価値をどのように見定めるか難しそう。すごい技術を使っているだとか、誰にも真似できない技によるものってのは、それはそれで価値はありそうだけど、美術品としてはまた意味合いは違いそう。
アンディー・ウォーホルのキャンベル缶の絵だったり、村上隆のアニメのような作品だったり、陶製の空き缶だったり。美術的な価値をそこに見出す、もしくは付与する時、人は何を考えているのでしょうね。
権威に裏付けされ、価値評価の定まっているものをコレクションしようというのは分かり易いけど、これだ!と自らそこに価値を見出して集め出すって、それはそれで目利きというか、センスというか、度胸がないとできそうにない。
もちろん、作品は作家の才能によって生み出されるもの。でも、それを見出し、さらには世に広めようとする人がいなければなかなか“価値あるもの”にはなっていかない。それはSNS全盛の今だって本質的には変わらないだろう。

何が言いたいかだんだん分からなくなってきたけど、とにかく「マダム菊地」さすがです。

★ 美術展情報

「珠玉の現代陶芸 マダム菊池のコレクション」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/6/10(Sat) - 9/3(Sun)
  • 開館時間 : 11:00 - 18:00
  • 休館日: 月曜日 , 7/18(Tue) : 7/17(Mon)は開館
  • 料金 : 一般1,000円 学生 800円 小・中・高校生 500円
  • 公式サイト : 最新の展覧会 | 智美術館 - Musee Tomo
  • 図録 「珠玉の現代陶芸 マダム菊池のコレクション」





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