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美術 : 美術展、写真展紹介 ブログトップ
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「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展 まだまだ知らない顔を持つインドを垣間見る [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展を観てきました。

★ 展示内容

本展は、インドの写真家ダヤニータ・シンの作品をテーマ別に構成した企画展。
公式サイトの説明によると、
ダヤニータ・シンの作品は視覚的な小説とも呼べるような、ドキュメンタリーとフィクション、夢と現実、不在と実在が綯い交ぜになったユニークな世界を展開しています。近年は移動式の「美術館」を考案し、全体を〈インドの大きな家の美術館(Museum Bhavan)〉と名付けました。詩的で美しい世界のなかに、現代写真・美術が抱える美術館システムやマーケット等の問題、現代社会におけるセクシュアリティや、格差、階級、ジェンダー、アーカイブ、情報等の様々な問題が示唆されています。また、従来の写真や写真集という概念を軽々と超えて、写真というメディアの新たな可能性を切り開いています。彼女の作品は今後の写真のあり方を考える上でも示唆に富むものです。
とのこと。世界的にかなり有名な写真家とのことですが、ごめんなさい。私は“初めまして”でした。

テーマ別展示は下記の通り。
  1. マイセルフ・モナ・アハメド
  2. 第3の性(ポートフォリオ)
  3. 私としての私
  4. セント・ア・レター
  5. ミュージアム・オブ・チャンス
  6. ファイル・ミュージアム
  7. リトル・レディース・ミュージアム 1961年から現在まで
  8. ミュージアム・オブ・シェディング
  9. タイム・メジャーズ
  10. モナ・アンド・マイセルフ
  11. スーツケース・ミュージアム
「ミュージアム・オブ・チャンス」などが“移動美術館”仕様で展示されている。折りたたまれる分が細くて、折りたたみ数が多い、“屏風”のようなものを想像すればいいでしょうか(想像しにくい?!)。各作品はスクエアだったり、横長だったりと、色々。パタパタ“屏風”にズラリと並んでいる。確かにこれならば移動も可能だし、パッと開いて作品展示が出来るだろう。

★ 感想

ダヤニータ・シンは欧米系メディアのカメラマンとしてキャリアをスタートさせた。だが、インドの貧困の様子やエキゾチックな場面の写真ばかりを求められることに違和感を感じ、アート写真家に転向したのだそうだ。確かに、インドと聞くとどうしてもそんなステレオタイプなシーンが浮かんでしまう。道路を歩く牛や、その脇で寝ているのか死んでいるのか分からない人がいたり、そんな光景がインドの印象だ。

単純に人口が多いから、他の国と割合が同じだとしても、絶対数は膨大なものとなるのだろう。LGBTをテーマにしたのは頷ける。
とはいえ、LGBTと言うと化粧をした”男性”を被写体に多く取り上げるのはいかがなものか。それこそステレオタイプなんじゃないかな?と思ってしまう。派手な化粧をするのはLGBTではない人にも当然、いるし、性を商売にしている人も少なからずいるだろう。そして、誰もが商売を抜きにした日常生活ではノーマルな化粧をして、もしくはスッピンで暮らしているだろう。LGBTだからといって、ことさら性を強調した感じではないと思う、日常の中では。
そんなこんなで、この作品群はちょっといただけなかった。

中国四千年の歴史、とはよく言われるフレーズだが、インドの歴史はざっとどの程度なのだろうか。それを思うと、”ライブラリアン(司書)”って特別感がある印象を受ける。歴史の証人、語り部、伝承者。山のように積まれ、無造作に束ねられた、中身がなんだか分からない書類の束を背景にしたそんな人々の姿は神秘的でもある。
そんな棚にはインデックスがどこにも貼られていないように見える。となると、どこになにがあるかはライブラリアンの頭の中だけに存在するのだろうか。記憶と記録の同一性。であれば、遙か太古の歴史もその中に納められているのかもしれない。そんな想像をさせてくれるシーンだ。

可動式美術館と言う発想も、そんなシーンの延長と思えば必然だったようにも見えてくる。語り部は人の集うところならどこでもその話を始められるだろう。そして、ダヤニータ・シンは同様に自分の作品を人の集まる場所でぱっと広げてみせる。作品のテーマと重層的な展開がとてもおもしろい。

森美術館で観た「N.S. ハルシャ」展(「「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」 インドの現代アート作家の不思議な世界」)といい、現代インドアートが熱いようだ。確かに、今は乾期だろうから、文字通り暑いだろうな、インド。デリーで40℃の気温を体験したことがあるが、そんな国だからこそ、パッションも気温以上に熱くなっているようだ。

奥が深いな、インド。まだまだ知らない、色んな顔があるようだ。

★ 写真展情報

「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」展は下記の通り、開催中。





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「ランス美術館展」 そうそう、これがフランス絵画ですよ。納得のコレクションです [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

ウインダムさんから招待券をもらい、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「ランス美術館展」に行ってきました。

公式サイトの説明によると、
ランス美術館は、歴代のフランス国王が戴冠式を行った大聖堂で知られる古都ランス市に位置し、初期ルネサンスから現代まで、幅広いコレクションを有しています。本展覧会はランス美術館の所蔵作品から、17世紀から20世紀まで、選び抜かれた作品約70点を展示、華麗なるフランス絵画の歴史をたどります。
また、ランス市に縁の深い日本出身の画家レオナール・フジタ(藤田嗣治)の作品群も併せて展示します。
とのこと。

展示はほぼ年代順に分けられていて、十七世紀から二十世紀にかけてのフランス絵画の歴史を概観できるようになっています。
展示パートは下記の通り。
  1. 国王たちの時代
  2. 近代の幕開けを告げる革命の中から
  3. モデルニテをめぐって
  4. フジタ、ランスの特別コレクション
  5. 「平和の聖母礼拝堂」のための素描

「国王たちの時代」の絵画は、王家の人々の肖像だったり、ギリシャ神話の神々だったりと、まさに“王道”の作品が並んでいる。ダヴィデやサテュロス、レダが活き活きと描かれ、王宮を飾っていたに違いないと思わせるものばかりだ。

時代は下って十八世紀・十九世紀になると、「近代の幕開けを告げる革命の中から」ウジェーヌ・ドラクロワ、カミーユ・コロー、ギュスターヴ・クールベ、ウジェーヌ・ブーダンなど、お馴染みの画家達が出てくる。彼らは神話や宮殿の世界から抜け出し、フランスの各地、そしてパリの街角に繰り出していく。

「モデルニテ」とは、一般には“現代性”のこと。アルフレッド・シスレーやカミーユ・ピサロは印象主義を追い求め、ポール・ゴーギャンやモーリス・ドニはその後を受けてそれぞれの現代性を追い求めていった。

「フジタ、ランスの特別コレクション」、「「平和の聖母礼拝堂」のための素描」ではレオナール・フジタ(藤田嗣治)が今も眠る「平和の聖母礼拝堂」(ランス市内にあるフジタの発案で建てられた礼拝堂)を飾る壁画の下絵や、ランス美術館に寄贈された彼の作品群が展示されている。

★ 感想

最近、“エッジの効いた”美術展を観ることが多かったせいか、この企画展は“安心して観られる”ものだった。美術の教科書で観た作品と雰囲気が似ているものが多かったからだろう。そう、フランス絵画の教科書のような企画展なのだ。
中世から抜け出してルネサンスを謳歌するような作品群だったり、印象派の絵画だったり、なるほど層だよな、と言うものばかり。


レオナール・フジタの作品群は、あの特徴ある女性像が神話のヒロインだったり、聖母だったりしていてこちらも興味深く観られた。
中でも、彼の描いたサロメには惹かれた。「サロメ図像学」の記事でも書いたように、サロメというモチーフは以前から気になっているもの。美しさ、無邪気さ、そして狂気を合わせ持った少女というイメージのサロメ。フジタの描くサロメは誰のものよりも少女らしい少女だった。一見の価値あり。

フランスにまた行ってみたくなった。その時にはランスの街にも足を伸ばし、ランス美術館やフジタの礼拝堂も訪れてみたい。
憧れのフランス。そのフレーズを思い出させてくれる企画展でした。

★ 美術展情報

「ランス美術館」展は下記の通り、開催中。






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「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展 もう一つの世界・王国創造の記録 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

ShareArtさんから招待状をいただき、東京ステーションギャラリー - TOKYO STATION GALLERY -で開催中の「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展を観てきました。
公式サイトの説明によると、
アドルフ・ヴェルフリ(1864-1930)は、スイス、ベルン近郊の貧しい家庭に生まれ、31歳で精神科病院に収容され、亡くなるまでの35年間を病院で過ごしました。収容から数年後、創作に目覚めた彼は25,000ページにおよぶ膨大な作品群を残します。美術教育を受けずに生みだされた他に類をみない表現、奇想天外な物語性、そして音楽に対する情熱はまさに驚異です。日本における初めての大規模な個展となる本展は、ベルン美術館 アドルフ・ヴェルフリ財団の所蔵品から70余点を紹介。緻密にして壮大、エキセントリックにしてファンタスティックな創造性をお楽しみ下さい。
とのこと。「アウトサイダー・アート - Wikipedia(アール・ブリュット:Art Brut)」と呼ばれる、“我流”で作られた(美術教育を受けていない人が作った)芸術作品の“分野”がありますが、アドルフ・ヴェルフリはその代表格なのだそうです。

展示は、作品群ごとにまとめられています。それぞれの製作期間は重なっているものが多いのですが、開始時期順になっています。
  • 1章 初期のドローイング/楽譜(1904-1907)
  • 2章 揺りかごから墓場まで(1908-1912)
  • 3章 地理と代数の書(1912-1916)
  • 4章 歌と舞曲の書(1917-1922)/歌と行進のアルバム(1924-1928)
  • 5章 葬送行進曲(1928-1930)
  • 6章 ブロートクンスト―日々の糧のための作品(1916-1930)

彼の主治医が“観察(診察?)記録”を付けていて、それも併せて紹介されている。それによると、「彼の絵はいつも同じ。空想の無秩序。驚くべきは直線や単純なカーブを、道具を使わずに描く技術だ」とのこと。彼の絵には、同じようなモチーフや模様が繰り返し描かれている。それはまるで、一つずつの模様が文字か記号のような感じ。彼にしか分からない言語体系がそこに作られている。
初期の作品にも既にそれらは描かれていて、晩年の作品に至るまで共通している(変化していない)ものが多い。

不遇な少年時代を過ごした彼は、「揺りかごから墓場まで」と題した作品群によって、子供の頃の記憶を“入れ替え”ようとしている。その中でアドルフ少年は、世界中を旅行して回る。この作品はそんな空想世界での旅行記なのだ。彼は(精神病医でも読むことの出来る)雑誌の記事や広告から知識を得たのだろうか、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカの各地を巡っていく。
彼にとっては、病院に入院している(閉じ込められている)世界ではなく、この作品の中こそが本当の世界・彼が生きている世界だったのだろう。

「地理と代数の書」で彼は一つの王国を築いていく。彼は蓄財をし、その富が利子によって膨れあがっていく。その金によって世界中を買い上げていき、彼の王国に組み入れていくのだ。彼はそのために利子計算を繰り返す。年ごとの金額が何十ページ、何百ページにも渡って試算されている。これは、彼の未来予想図なのである。その王国で彼は自ら「聖アドルフⅡ世」を名乗るのだった。

「歌と舞曲の書」は、その王国における祝祭歌なのだろう。そのページ数、五千。雑誌の切り抜きと思われる写真や記事をコラージュ風に配し、それらを囲んで言葉が並ぶ。

彼は自分の死期を感じ取っていたのだろうか。「葬送行進曲」ではマントラのごとく、いくつかのフレーズと、何かを表す数字が繰り返し、繰り返し書かれている。キーワードは“揺り籠”を表す“ヴィーガ”という方言。このフレーズを中心に、マントラは続く。
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★ 感想

「王国を創造する」ということはこんなにもパワーのいることなのかと感嘆。そんなに教育を受けていなかっただろう彼が、こんなにも想像を広げられたのはなぜなのだろうか。しかも、病院に措置入院させられていて外を歩き回ることはできなかったのに。彼の知識の源は新聞や雑誌だったのかな。画用紙ではなく、作品作りには新聞紙を使っていたそうだから、そこにも彼なりのこだわりがあったのかもしれない。
自分の王国を築き上げるのに、武力で侵略するのではなく、蓄財によって得た富で領地を買い取っていくという発想もおもしろい。そのために彼は、軍事計画ではなく、利息計算に固執している。その執念たるや、ものすごいものがある。利息表を何ページに渡って書き記してるのだろうか。ヘンリー・ダーガーの王国は少々血なまぐさいところがあるが、アドルフ・ヴェルフリは経済戦争を挑もうとしていたという感じ。
自分だけの空想の世界を想像するって、だれしも子供の頃に経験したもの。「二十世紀少年」のようなもの然り、「トム・ソーヤ」然り。それを大人になっても、そして死ぬまで続けられたのは幸せなことなのかもしれない。”悟りを開く”とはまさにこの境地なのだろう。仏たちが居並ぶ曼荼羅や、千年王国と同じ意味合いだ、彼の創造した王国は。教祖と呼ばれていないのは、彼がその王国の”国民”を欲していなかったからにすぎない。


言葉で彼の作品の説明をするのはとても難しい。とにかく、実際に観てもらわないことにはこの迫力、パワーは分かってもらえない。一見の価値ありです。私も、久しぶりに図録を購入してしまいました。
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★ 美術展情報

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展は下記の通り、開催中。




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