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「世界報道写真展2018」 子供たちの涙はもう観たくないのだが・・・ [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で「世界報道写真展2018」を観てきました。

★ 展示内容

世界報道写真展はWorld Press Photo (世界報道写真財団)によって行われるコンテストの入選作品を集めた写真展です。その名の通り、報道写真を対象にしたコンテストで、前年(2017年)に撮られた作品が中心となっています。八つの部門が設けられ、それぞれに単品作品・組み作品から選ばれるのです。その全ての作品の中で一点、大賞も選ばれます。今年の部門は以下の通り。
  • 現代社会の問題
  • 一般ニュース
  • 長期取材
  • 自然
  • 人々
  • スポーツ
  • スポットニュース
  • 環境

応募総数73,044点(4,548人からの応募)から選ばれた大賞作品は、ベネズエラのRonaldo Schemidtによるスポットニュースの部にエントリーされた作品。ポスターになっている一枚です。ベネズエラの首都カラカス、大統領に対する抗議デモの際に起きた事件(事故?)。警備隊のオートバイが爆発し、全身を炎に包まれてしまったデモ参加者の姿を捉えています。
映画だとこんなシーンはよくありますが、これは本物。よくぞこんな瞬間を、しかも目の前で起きている衝撃的なシーンを撮影できたな、と驚くばかり。

一般ニュースの部ではロヒンギャ難民に関する作品が何点も入賞。
正直、子どもの涙はもう見たくないのだけれど、難民問題はあちらこちらで起きていて、世界は何も変わらない・変われないと空しくなってしまう。
カメラマンの乗っている車両を囲むように難民たちが集まり、子供たちが手を伸ばして物資供給を懇願している。涙目のその顔から視線を逸らすことができなくなる。げっそりと痩せた家族。生気を失ったその表情が、彼らの過酷な状態を語っている。

人々の部では、スウェーデンのカメラマンが撮った「生存放棄症候群」の少女たちの写真が入賞していた。この“病気”、初めて知りました。トラウマからか、うつ病なのか、死んだように眠り続ける病気なのだそうだ。
二人の少女が眠っている姿。とても静かなシーンなのだが、そんな病気だと知って見返してみると恐ろしくなる。原因も不明で、もちろん治療法もない。明日は我が身か。

環境の部では、ゴミ問題を取り上げた作品があった。いくつかの国で取材をし、それぞれでゴミの収集や分別、リサイクルがどんな感じなのかを紹介している。と言っても、説明口調ではなく、ゴミ収集車での回収の様子や、東京で撮られたものはリサイクル業者に運ばれてきたゴミ(リサイクル資源)を荷下ろししている様子だ。それだけでも、各国での対応・対策の違いが良くわかる。

★ 感想

ロヒンギャ難民の問題は未だによくわからない。基本的に、宗教対立は“ピンとこない”というのが本音だ。だが、問題が深刻であることはこれらの作品を見るだけで理解できる。
追い立てられ、村から逃げだした家族が、自分たちの村が燃えている(燃やされている)のを遠くから見ている。徹底的な他者排斥と、暮らす場所を無くして“難民”となった瞬間と、その一枚から読み取れる。

ISIS(イスラム国)による人間の盾や、ボコ・ハラムによる女学生集団拉致。ラテンアメリカでは麻薬組織による殺人が横行。アメリカでは銃乱射。毎年、報道写真展を観たあとの感想で書いている気がするが、人は変わらない、歴史は繰り返す、争いはなくならない、と、世の中に対する諦めムードになってしまう。この企画展を年に一回観るのは苦行・荒行のようなものかもしれない。

アメリカの極右団体やそのメンバーを撮った作品が自分の中では重かった。もちろん、言論表現の自由はある。自分を守ることが大事、と言う考え方も理解できるし、私もそう思う。でも、だからと言って他者より自分(たち)が無条件に優れている・上の存在であるとの考えはいかがなものか。それこそDNAを調べたら純血・純粋系統の人なんていないだろうに。
だが、彼らは何かを信じて銃を手に我が道を行く。色んな問題が解決できないはずだ。


環境の部で入賞していた作品の、岩から岩へと飛び移る瞬間のイワトビペンギンの姿が唯一の救いだった。
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★ 写真展情報

「世界報道写真展2018」は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2018/6/9(Sat) - 8/5(Sun)
  • 開館時間 : 10:00 - 18:00
  • 休館日: 月曜日(7/16(Mon)は開館、7/17(Tue)は休館)
  • 料金 : 一般800円 学生 600円 中高生・65歳以上 400円 小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト : 世界報道写真展2018
  • 巡回
  • 参考書 : World Press Photo 2018






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「うるしの彩り―漆黒と金銀が織りなす美の世界」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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住友コレクション 泉屋博古館で開催されている「うるしの彩り―漆黒と金銀が織りなす美の世界」展のブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別な許可をいただいて、写真撮影しています。通常は撮影NGです。

★ 展示内容

公式サイトの説明によると、
本展では、住友家に伝わった日本、琉球、朝鮮、中国の漆工芸品の中から、茶道具や香道具、そして近代に製作された華やかなおもてなしのうつわをご紹介します。茶道や香道、能楽などの伝統文化の世界で重用された作品や、京都で作られた雅な会席具や書斎を飾る硯箱など、おもに賓客をもてなす場で使われた華やかな調度をご紹介するとともに、文人たちが愛玩した中国や琉球の作品もあわせて展示します。変化に富んだ華麗な漆の世界をお楽しみください。
とのこと。
展示構成は下記の通り。
  • 能とうるし ―楽器と衣桁―
  • 宴の器
  • 伝統文化とうるしの美術
  • 中国から琉球、そして日本へ
  • 伝統と革新 ―明治時代の漆芸家たち―

以下、分館長、担当学芸員のみなさんによるギャラリートークによる展示作品の説明です。

上記の説明にある通り、本展は京都本館に収蔵されていた作品群に加え、さらに住友家から新たに寄贈されたものも加わっている。そのため、東京初公開の作品が多数。そもそも漆作品だけの企画展は東京初とのこと。

まずは能に用いた楽器類が並ぶ。展示のため、鼓や太鼓から皮を外した形になっているので、胴の部分の細工がよくわかるようになっている。
住友家の当主だった春翠(しゅんすい)は能楽師に師事して能を学ぶほど、熱心だった。そのため、コレクションも楽器を始め、多岐に渡っている。
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古来、楽器には吉祥のデザインが用いられることが多い。これは音の出るものに神秘性を感じていたからだろう。
蒔絵は日本独自のもの。金銀研ぎ出し蒔絵など、様々な技法がある。一方で、中国では螺鈿や彫漆(漆を厚塗りし、彫刻する技法)が主。この違いもまた面白い。
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春翠は能のイベントを催すとともに、招いた客人たちをもてなすための料理用盆、膳にも趣向を凝らした。
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能の演目がデザインされているこれらの作品は京漆匠 象彦(ぞうひこ)八代目の手によるもの。客人はなんの演目なのかを当てるという楽しみもあったようだ。
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茶道、香道の調度品も多数、コレクションされた。
茶道具・香道具は初め、唐物(中国からの輸入品)が中心だった。左は足利義政ゆかりの香合。明時代の作。
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江戸時代になると和物(国産品)が中心となっていき、千家名物と呼ばれるものが出てくる。
住友コレクションには、江戸時代末期の蒔絵師だった原羊遊斎(はらようゆうさい)の作品などが並ぶ。かの酒井抱一がデザインしたものもある。
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硯箱は蓋の意匠が面白い。表と裏の両面に細工が為されていて、この二面で話が繋がっている。蓋がされている時、そして硯を利用する時に蓋を開けた時、両方で楽しめる趣向だ。
展示には鏡が用意されているので、両面を見ることができるようになっている(ちょっと見にくいけど・・・)。
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中国の作品も並ぶ。黄色の漆で龍を彫った彫漆など。黄色も龍も皇帝のシンボルだが、皇帝を表す龍は、五爪で描くのがルール。
そのほかに好まれたテーマは花鳥、吉祥、仙人、楼閣山水、子供(子孫繁栄のイメージ)など。
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螺鈿は見る角度によって色合いが変わる面白みがある。
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漆器は、中国では日用品・消耗品だったのであまり残っていない。日本ではお宝として大事にされたので今の時代にまで残っている・伝わっているものが多い。
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琉球の作品。日本や中国へ輸出をしていた。それぞれの国の好みに合わせたデザインとなっているのだが、南国風の穏やかさが感じられ、好まれた。
地域による技法、モチーフの違いも漆器の楽しみの一つ。
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★ 感想

漆・漆器のことを英語で"japan"と言うこともある(Japan | Define Japan at Dictionary.com)ほどなので、まさに日本を代表する工芸品と言えましょう。さすがは春翠さん、コレクションとして外していないですね。今回も住友家のお宝満載の企画展でした。蒔絵や螺鈿は見た目も華やかなので、観て回るのも楽しかったです。
でも、こんなお盆や膳で食事を出されたら、緊張しちゃって料理の味も分からなくなりそう。

漆器というと、日本史で習った正倉院の宝物や玉虫厨子などが思い浮かぶ。あれらは中国からの輸入品だったり、中国技術によって作られたものだったのかな。でも、江戸時代になると“日本を代表する・・・”となっていた訳で、いかにも日本らしいなと思えますね。
京漆匠 象彦(ぞうひこ)による蒔絵の製作工程紹介ビデオがYouTubeに上げられていますが、いやぁ、大変そう。日本の職人技、ここにありって感じ。


高級品ではあるけど、日用品にも使われている漆。その意味で漆器は馴染みがある存在だけど、それ故に“鑑賞ポイント”としてどんな点があるのかよく知らないと言うことも。あと、技術的な面でも知らないことが多くて。今回の企画展では、そんな私にも分かり易い解説が書かれたボードもあったりして、なるほどこういうことなのかと納得しながら鑑賞できました。蒔絵とか螺鈿とか、そのレベルまで走ってましたけど、研出蒔絵だの高台寺絵巻(平絵巻)だのになるともう・・・。勉強になりました。

★ 美術展情報

「うるしの彩り―漆黒と金銀が織りなす美の世界」展は下記の通り、開催中。






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東京都写真美術館「内藤正敏 異界出現」展 は婆(ばば)も鬼もミイラもバクハツしているぞ! [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で「内藤正敏 異界出現」展を観てきました。

★ 展示内容

大学時代は化学を専攻し、卒業後にはフリーの写真家となり、生命や宇宙をテーマに作品製作を始める。その後、即身成仏(ミイラ)に“出会って”からは、修験道や民間信仰などの世界に入っていった。

公式サイトの説明によると、
本展は異色の写真家・内藤正敏の50年を超える軌跡をたどりご紹介します。
「モノの本質を幻視できる呪具」である写真と、見えない世界を視るための「もう一つのカメラ」である民俗学を手段として、現世の向こう側に幻のように浮かび上がる「異界」を発見する人、内藤正敏。そのヴィジョンは、今日の私たちに大きな戦慄と深い洞察を与えてくれるはずです。本展は主な写真シリーズを通して、その50年を超える足跡をたどるとともに、その表現に通底する独自の世界観、生命観をとらえていきます。
とのこと。

展示構成は以下の通り。
  • 初期作品
  • 即身仏
  • 北海道開拓写真の発掘
  • 東北の民間信仰
  • 婆バクハツ!
  • 東京 都市の闇を幻視する
  • 遠野物語
  • 出羽三山
  • 出羽三山の宇宙
  • 神々の異界
  • 戦慄⸺東北芸術工科大学「内藤正敏の軌跡」展より 2004年
  • 聖地


「初期作品」は、宇宙や生命をテーマにした作品が並ぶ。「SF写真」と呼ばれるこれらの作品は、宇宙人のような生命体を思わせる“模様”は観るものに何かを感じさせずにはいられない。
これら作品はSF小説の表紙を飾っているものもあり、人気の高さを物語っている。

「出羽三山」では、各地に伝わる、びんずる尊の仏像や鬼の面をクローズアップした作品が並ぶ。表面の朱が剥がれたり、一部破損していたりする鬼の面は時の流れを感じさせるとともに、人々に深く深く信仰されていることを示しているのだろう。
「出羽三山の宇宙」では、そんなびんずる尊と羽黒鏡(国産の銅鏡)とをコラージュした作品などが大判(549mm x 407mm)でプリントされていて、迫力を持って迫ってくる。

★ 感想

東京都写真美術館の収蔵品による企画展です。これだけの作品群をコレクションしているんですから、内藤作品を写美はかなり高く評価しているんですね。写真のプリントはもちろん、写真集も多数、展示されていました。表紙を手がけた書籍(早川書房のSF小説群)まで並んでいたんですが、さすがにこれらは“作家蔵”と展示リストにはありました。

以前も写美の企画展でいくつかの作品を観る機会がありましたが、こうやってまとめて観るとその迫力に圧倒されます。「婆バクハツ!」のシリーズなんて、言い方は悪いですが、“夢に出てきそう”ですよ。闇の中からぬっと顔を出して、みそっ歯をあらわに怪笑している姿は忘れられません。

忘れられないという意味では「東京 都市の闇を幻視する」シリーズもなかなか“タフ”な作品群でした。ホームレス・路上生活者と呼ばれる人たちの姿を写していて、普段は目を逸らして見て見ぬ振りしている私たちに、ダイレクトに問いかけてくる感じです。見えているのに見えない(見ようとしない)辺りや、生活空間が重なってはいるのに交わらない、平行しているところが“都会の中の異界”として表されているようです。

いやぁ、どの作品もすごい迫力でした。ほんと、一度見たら忘れられないものばかり。これは観ておくべきでしょう。おすすめです。

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★ 写真展情報

「内藤正敏 異界出現」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2018/5/12 (Sat) - 7/16 (Mon)
  • 開館時間 : 10:00 - 18:00
  • 休館日: 毎週月曜日(ただし、7/16 (Mon)は開館)
  • 料金 : 一般 700円, 学生 600円, 中高生・65歳以上 500円, 小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料, 第3水曜日は65歳以上無料, 年間パスポート提示者無料(同伴1名まで無料)
  • 公式サイト : 東京都写真美術館
  • 図録2,160円(税込) 全展示作品を掲載、内藤正敏「もう一つのカメラ 写真とフォークロア」(1987年)を再録
  • 参考書




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