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「パリ・グラフィックーロートレックとアートになった版画・ポスター展」 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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三菱一号館美術館で開催中の「パリ[ハート]グラフィック―ロートレックとアートになった版画・ポスター展」のブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別の許可をもらって写真撮影しています。普段は一部エリアを除いて撮影禁止です。

★ 展示内容

まずは学芸員の野口さんと美術ブロガーのTakさんのトークショーがあり、今回の企画展の狙いや、当時の版画・ポスターに関して話を聞きました。以下、その概要。

「ヴァロットン―冷たい炎の画家」展 ブロガー特別内覧会 : 一人の人が描いたと思えないくらい多彩な作品」の記事で紹介したヴァロットン展で共同したゴッホ美術館と今回もコラボ。アムステルダムで春に開催した企画展の巡回展となってます。パリにおける十九世紀後半の版画を概観するもの。特徴としては、ジャポニズム、特に浮世絵の影響が随所に見られること。

サブタイトルの「アートになった・・・」とは、古くは絵画のコピー手段に過ぎなかった版画が、それ自体が芸術として認知されてきた時代だったことを表したもの。商業芸術として発展し、ポスターとして誰もが観られる身近な存在になっていった。
一方で、上流階級向けには“コレクターズ・アイテム”的な、より希少価値の高い、そしてテーマも私的なものを題材にした版画作品が多く製作された。このように、版画は芸術として二つの方向へと分化していった時代でもあった。

この流れを推し進める原動力となったのが、リトグラフの技法。この技法が開発されたことにより、彫りがいらない、より画家の筆のタッチが活きる作品が生み出されていった。
ただ、原板は石なので、あまり大きなものはできない。大判のポスターを作成する際は何枚かをつないでいった。

現在まで残っているものは、実際に街角に貼られていたものなども多く、汚れていたり、宣伝文句などが上書きされたものがほとんど。だが、三菱一号館美術館ではデッドストック版とも言える、ロートレック本人が保管していた、上書きの文字がない、折り目がない、とてもきれいな作品を集めている。
そんな中の一枚、展示No.18「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」はロートレックのポスター作品のデビュー作。最初の作品で既に数々の表現方法を用いていて、その完成度は高い。この作品でいきなり人気が出た。彼は正規の美術教育を受けていないが、ボナールなどと同じく、この時代には油彩も版画も同等の価値を認められていて、画家として評価に差がなかった。
現在で言うと、ネットで作品を発表していきなり人気となった人たちのような感じ。当時のパリでは、版画は最新メディアだったと言える。


と言うことで、展示構成は以下の通り。分かり易く、前半は大衆向けのポスターなどを中心にした作品、後半(こちらの方が数は多いです)が“コレクターズアイテム”的な作品群。
  • はじめに 高尚(ハイ)から低俗(ロー)まで
  • 第 1 章 庶民(ストリート)向けの版画
  • 第 2 章 知的階層(エリート)向けの版画


ケースに入っているのがリトグラフの原板。まさに石版です。
ちなみに、最近はこの石材も希少なものになってしまったので、現代の版画家は金属板を使っているそうです。
右上のケースに入っているのは木版の原板。これで刷られた作品が展示No.83「洗濯」です。
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ポスターや商品のカタログなど、商業ベースに乗って版画作品は人々の間に一気に広まって行き、その芸術的な価値・地位を確立していった。
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“芸能人”も作品のモチーフになることが増えてきた。ショーや劇場のポスターはもちろん、彼ら・彼女ら自身が主人公になることも。
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一方で、エリート向けにはかなり私的なモチーフも多い。ちょっと考えさせる“知的”なものや、エロチックなものまで色々。
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ジャポニズムも大きな特徴の一つ。特に浮世絵は同じ版画と言うこともあるのか、その影響を受けた画家は多数。
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これらは、かのゴッホがコレクションしていた浮世絵作品群。彼はこれらを観て、そこからインスピレーションを得たり、構図を真似てみたりした。
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ヴァロットンの作品も多数、展示されていました。
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今で言うと“トレーディングカード”なのかな。ポストカード付きの版画集も販売されていた。もちろん、部数限定。
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★ 感想

デザイン画のルーツ的な、この時代の版画・ポスターは馴染み深い。これまでも、色々な美術展で観てきた作品がある。だが、このようにまとまって並べられると、なるほどそこに流れがあり、この時代の潮流というものが感じられた。

ロートレックの作品に絵が描かれた俳優、踊り子たちは、なんとも意地悪そうな表情をしている。また、それほど美男・美女でもない。だからこそ、親近感が沸き、惹きつけられるのだろう。そして、彼ら・彼女らが出ていた舞台を観てみたい、と思わせてくれる。さすがはロートレック、二十一世紀の今でも人々を惹きつける力は衰えていないんじゃないだろうか。

それらと対比しての“エリート向け”作品は何とも隠微。大人のコレクションとしていいですな。前回の企画展でファンになってしまいましたが、ヴァロットンの作品、いいです。怪しげな男女、いかにも“訳あり”。そこに色んな物語を妄想させてくれます。“大人の萌え作品”ですね。

“一部、撮影可能エリア”の件ですが、この一角がそう。作品はもちろん、それを飾る壁面も当時のパリの街角を写した写真で飾られています。ジャン=ウジェーヌ・アジェの作品なのかな。
街角に貼られたポスター、カフェに集う芸能人たち、と言う雰囲気を醸し出してます。
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三菱一号館美術館ではお馴染みの(?)セルフィーコーナーもあります。自分がロートレックのポスターのモデルになれるという趣向です。
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そうそう。こんな部屋もあって、今回の企画展の図録や、以前の企画展のものがじっくりと読めるようになってます。ここで一休みしながら、図録を確認してください。購入は一階のショップでどうぞ。
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見慣れた感のあった版画・ポスターですが、こうやって並べられると壮観。確かにこれら自体で芸術的な価値があるぞ!と思わせてくれました。そして、改めて勉強もできたかな。今回もおすすめです。
いやぁ、面白かった。

★ 美術展情報

「パリ[ハート]グラフィック―ロートレックとアートになった版画・ポスター」展は下記の通り、開催中。






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「典雅と奇想 明末清初の中国名画展」@泉屋博古館分館 水墨画ってこんなに楽しいものだったんですね [美術 : 美術展、写真展紹介]

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ブロガー内覧会に行ってきました。例によって、特別な許可を得て、写真撮影させてもらいました。通常は撮影禁止です。

★ 展示内容

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展」の記事で紹介した企画展とコラボレーションしている、もう一方の企画展です。こちらは泉屋博古館 住友コレクションをベースにした展示です。それにしても、どちらもすごいコレクションですね。

さて、内覧会は始めに、野地館長による概説から。あちらの館長とは対照的に、野地館長はあくまでも静かに、でも内容は熱く語る感じの方です。以下、概略を列挙。
  • 見た目はずいぶん異なっているが。両館のポスターも実はコラボレーションを意識したものになっている。あちらは猫、そしてこちらは魚をメインにしている。実はこれ、二枚並べると猫が魚を狙っているという趣向。
  • 根津美術館でも南宋絵画展が行われて、話題になった。この明末清初(日本では江戸時代初期にあたる)にも注目していって欲しい。講演会なども行われ(下記参照)、誰でも参加可能なので聞きに来て欲しい。
  • 住友コレクションからの展示は巻物や書籍が多い。どうしても、一度に見せられる部分が少ない。そのため、会期中に二十回は“ページ送り”をして、色々な作品(部分)を観てもらうようにする。
  • 大幅な展示替え(11/20)もあり、企画展も前期・後期と分けている。
とのことでした。
板倉先生は、ギャラリートークで色々と解説。以下、その内容も織り交ぜて。
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展示構成は以下の通り。
  • Ⅰ 文人墨戯
  • Ⅱ 明末奇想派
  • Ⅲ 都市と地方
  • Ⅳ 遺民と弐臣
  • Ⅴ 明末四和尚
  • Ⅵ 清初の正統派、四天呉惲

漢民族による明朝が衰えていき、ついには消え去る。そして、北方の女真族による王朝が建ち、清朝が始まる。まさに激動の時代。そんな中だからこそ、文人たちや職人たちも新たな絵画の形を試し、新規の作品を生み出していった。

文人画で注目するのは徐渭(じょせい)の作品。今回、東京国立博物館の所蔵品と、この泉屋博古館所蔵作品の二店を並べて展示することができた。これは初の試み。
妻を殺害してしまったなど、プライベートでは色々あった徐渭だが、作品は、周到な筆の技を駆使したもの。一気呵成に描いたように見せていて、墨のぼかしを活かす場所をきちんと空けておいてから筆を入れたりして、綿密な計画が為されてから描かれたと思われる。
作品は、酒の肴を描いたもの。客人をもてなす気持ちの表れ。

明末は奇想の時代でもあった。それまでの伝統的な造型に加え、より自由な描写を採り入れている。江戸時代の(日本の)文人たちも、そんな作品に憧れを懐いていた。
北宋絵画は近景の風景を大きく描く。だが、それを無視して遠近を同等に描いたりする。さらには、重力を無視したかのような、浮遊感のある山々の姿を描いたものもある。そしてまた、着色をした作品もある。自由な、実験的な作品がこの時代に多く現れてきた。
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明の時代には、江南地方で多くの都市が発展していった。なかでも蘇州は交易も盛んで、文人たちによる芸術活動と共に、職人たちによる工芸品の生産も盛んであった。
李士達らによる山水画には往古の詩が引用されているものがあり、それをモチーフにした作品は、“知っている人には分かる”ものになっている。
また、筆遣いでは“かすれ”と呼ばれる技法が用いられたものが多く、岩の表現などに適用されている。全体的に動きを感じさせる表現だ。それは、西洋絵画の技法ともまた違い、当時の文人・職人たちが実験的に編み出していったオリジナルの技法。
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清朝が始まる。だが、女真族は巨大国家経営には不慣れであった。そのため、明の時代の役人たちを多く“再雇用”する。そんな人々は「弐臣」と呼ばれる。一方で、それを潔しとしない人々もいて、野に下っていった。彼らは「遺民」と呼ばれる。
仏門に入る人も多く、そんな遺民の中で「四和尚」と言われる石濤(せきとう)、漸江(ぜんこう)、石溪(せっけい)、八大山人(はちだいさんじん)が文人画で大いに活躍した。
住友コレクションは、この四和尚の作品に関しては世界に冠たるもの。世界中の研究者がこのコレクションを参照している。中でも石濤の作品群は秀逸。重要文化財に指定されているものもある。複雑な色使いが特色。実は唐の時代の絵画も色があり、色使いにルールがあった。距離・奥行きを色で表している物で、青緑水墨画と呼ばれている。そのルールを破った作品を石濤は描いている。個性を主張し、禅の理論で変革を起こしたのだ。岩の表面に赤を使っている辺りを観て欲しい。
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八大山人は擬人化が得意。一般に中国絵画は擬人化がヘタ。だが、彼の作品はしっかりと“キャラ立ち”している。
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★ 感想

板倉先生の話がまたも、日をおかずして聴けました。とっつきにくい感じのする山水画、水墨画ですが、こんな点に注目すると楽しめるのね、と再度、認識。またまた楽しいお話でした。

奇想派のネーミング通りの作品が多く、面白かったですよ。特に、展示No.5の米万鍾(べいばんしょう)「石柱図」は、山全体(いや、巨大な岩?)が宙に浮いたような絵。ルネ・マグリッドの「ピレネーの城」という作品があるが、あれは巨大な岩が海の上に浮かんでいる作品だ。それよりも三百年程前にこんな不思議な作品が描かれていたとは。どちらも浮遊感としては一緒だが、米万鍾の描く山(岩?)は造形的にも凝っている。天空の城のルーツはもしかしたらこれか? なにせ、スウィフトの「ガリヴァー旅行記」だって十八世紀初頭の作品。なんか、そんな想像(妄想?)が膨らんできた。

水墨画にこれほど「色」が使われているとは知りませんでした。いや、これまでも作品を観ていたものの、意識がなかったために気が付かなかっただけだったのかも。
墨の濃淡で遠近感を表現していることは知っていましたが、色分けすることによる表現なんてのもあったんですね。まあ、石濤の作品はそのルールを破っているということなので、いきなり応用問題から入ってしまった感じ。ちょいと、ベースになる知識を仕入れておいた方がいいかなと思った次第です。「奇想」を楽しむには、そのもととなる「基本」「基準」を知らないといけないですから。

それにしても、こんな企画展が二つ同時に開催できるほど、日本には有数のコレクションがあったんですね。明清絵画、明末清初、中国名画のブームが来るかな、これから?! そのはしりとして、この二つの企画展、必見でしょう。

★ 美術展情報

「典雅と奇想 明末清初の中国名画」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/11/3(Fri) - 12/10(Sun) / 前期 11/3 - 11/19, 後期 11/21 - 12/10
  • 開館時間 : 10:00 - 17:00
  • 休館日: 月曜日
  • 料金 : 一般800円 学生 600円 中学生以下 無料 / 静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展のチケット持参で20%off
  • 公式サイト : 東京:展示会情報|泉屋博古館 住友コレクション
  • 関連イベント:
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    • 11/25(Sat) 15:00-16:00 ゲスト・トーク ゲスト:板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所・情報学環教授)
    • 11/11(Sat), 12/2(Sat):ギャラリー・トーク  ナビゲーター:野地耕一郎(泉屋博古館 分館長)

    以下のイベントは開催場所が異なります。静嘉堂文庫美術館地下講堂での開催です。お間違いなきよう。 各回とも 定員120 名、10:00から整理券配布 (静嘉堂文庫美術館の入館券が必要です)。11:00開始。
    1. 11/19(Sun) :講演会「豊かなる明末清初の絵画-倣古と奇想」 板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所・情報学環教授)
    2. 11/25(Sat):対談「明末清初の書-連綿趣味の魅力を語る」 髙木聖雨氏(大東文化大学教授) ・富田淳氏(東京国立博物館学芸企画部部長)
  • 図録 「典雅と奇想 明末清初の中国名画
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静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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ブロガー内覧会に行ってきました。例によって、特別な許可を得て、写真撮影させてもらいました。通常は撮影禁止です。

★ 展示内容

静嘉堂文庫美術館で開催中の「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展は、中国絵画の明朝末期・清朝初期の作品を集めた企画展。

● トークショー


今回もトークショーがあり、“饒舌”館長の河野館長と、東大東洋文化研究所教授の板倉先生が登壇。司会は青い日記帳のtakさん
まさに“饒舌”館長の真骨頂発揮というトークショーで、盛り上がりました。明清絵画という、渋いお題なのに、笑いも起きる場面多数。さらにはお二人のバトルも勃発。そんな楽しい感じなのですが、内容はとてもディープ。知らない話が一杯。
そのため、私には“内容をまとめる”程の知識もないので、以下、聞き書きそのままです。いや、聞き間違いもありそう。その辺りはご容赦を。

館長:
「あこがれの・・・」と言う今回の企画展のネーミングは、日本人が憧れた明清絵画を日本人目線で観た、と言う意味。
東京(六本木)|住友コレクション 泉屋博古館「典雅と奇想―明末清初の中国名画展」とのコラボレーション企画になっている。
明治大正時代、清朝崩壊に伴って明清絵画が大量に日本に渡ってきた。しかし、今回は江戸時代に入ってきたもの(古渡り)のコレクション。当時、中国は政治・経済・文化の憧れの対象だった。

あの北大路魯山人も初めは中国文化を愛していた。「中国に行けるならば、牢屋の中でもいい」と言った。近代になって西洋文化が上になったが、まだまだ憧れは強かったと考える。

板倉先生:
室町時代は東山御物(宋の時代のコレクション)が憧れの対象だった。江戸時代になって変化が生じ、明清絵画が人気になった。
東山御物は限られた人しか見られないものとなってしまった。が、知識人たちは、知識としてどんなものかは知っていった。その知識を比較のベースとして、明清絵画に接している。

館長:
伊藤若沖が模写した作品の、そのオリジナルの作品が収蔵・展示されている。
伊藤若冲の作品は展示していないが、伊藤若沖と沈南蘋との関係を説いたパネルを展示しているので見て欲しい。

板倉先生:
虎図(展示No.8):元々は中国の作品。韓国でも模写された。若沖も韓国の作品を見て模写している。ただ、若沖は中国の毛松の作品と思っていた。
韓国の作品は紙を横に接いでいる。また、風が手前と奥で逆に吹いている。これは中国絵画の表現にはない。
初公開作品が八点。

館長:
狩野探幽による模写は縮図が多い。張翬筆 山水図模本(展示No.2)は原寸大の模写。これは希少。
中国の原画は力強い。日本人が模写したものは柔らかな表現。

沈南蘋の老圃秋容図(展示No.10)の猫をポスターにした。岩合光昭さんの人気にあやかろうと。。。
来日してすぐに描いたんじゃないか。。。。

板倉先生:
いや、その猫は来日前に描いたものを持ってきた。日程的に、来日してすぐに書いたとは考えられない。
当時の文化人が見た沈南蘋の作品・作風はこれ。油絵っぽくなるのはその後・帰国後。

館長:
谷文晁派による老圃秋容図粉本(展示No.11)には 右下に判子が押されている。谷文晁の画塾の印鑑。お手本として利用していた。

板倉先生:
山水画のおすすめは李士達のもの。円山応挙が模写している。彼の作品は火難を避けるとの信仰があったため、好んで飾られた。

絖本(ぬめ:絹の光沢がよく出る)、金線(?)を多用。斜めから見ると光る。是非、角度を変えて眺めて欲しい。例えば、王建章の米法山水画(展示No.28)。金線の上に描かれているので、光って見える。
絖本は与謝野蕪村が愛用した。絖本、金線ブームは日本からの逆輸入で中国で流行ったらしい。

館長:
話してきたとおり、明清絵画は江戸時代の文人たちの憧れであり、彼らの創作を促し、影響を与えた存在だった。
そうそう、明清の書も見て欲しい。絵画だけではなく、書を残した人も多い。

● 展示

今回の展示はテーマごとに分類された構成になってます。詳細は以下の通り。
  • はじめに~ 静嘉堂の明清絵画コレクション
  • 明清の花鳥画
  • 明清の道釈人物・山水画
  • 文人の楽しみと明清の書跡
  • 清朝陶磁の紋様表現


花鳥画は色鮮やか。花鳥風月を描いた作品は、吉兆のためのものと、博物的な観点のものがある。
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道釈画(どうしゃくが:道教・仏教関連の人物画)では五百羅漢図(展示No.19)などが展示されている。一人だけ、やけにリアルに描かれた人物がいるが、この人はきっと実在の人物(僧侶)。
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明清絵画は、江戸時代の文人たちに人気で、茶会の席などで展示され、多くの人が観る機会を得た。
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明末清初の時代、明朝に従い続けた「遺臣(いしん)」と呼ばれる人たちと、新たな勢力である清朝に乗り換える「弐臣」と呼ばれる人たちがいた。職を失うこととなった遺臣の人たちは故郷などで余生を過ごし、多くの作品を残すこととなった。
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お手本として「カタログ」も作られ、多くの人が明清絵画を知る機会を得た。
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★ 感想

宋の時代の水墨画は、いかにも“水墨画”という感じで、寺社の奥まった部屋に飾られている物、と言うイメージがある。でも、明清絵画はもう少しファミリアな感じがする。実際、説明にある通り、江戸時代も一般の(と言ってもセレブではあったのだろうが)文人たちが好んだそうだが、身近な存在だったのだろう。

さらには、ちょっとリアルな表現なのも面白い。写実的と言うほどではないものの、虎の毛並みや飛んでいる虫の脚など、やけにリアル。一般の遠近法とは違うものの、墨の濃淡、色合いによる奥行き感の表現など、現代の我々には馴染みやすい気がする。
「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」展トークイベントはアートと歴史ミステリーと江戸文化論と盛りだくさん」で観た秋田蘭画は、名前の通りに西洋絵画の影響を受けたものだけど、この明清絵画は中国の画家たち・職人たちが独自に編み出した様式。似ている点もある物の、やはりオリジナル。その相違点を観るのも面白かった。

中国の原画と、日本人画家が模写したものが並んで展示されているのも面白い。館長の仰る通り、模写とは言え、ずいぶんと雰囲気が違っている物がある。関心を持った点を中心に、その部分はより丁寧に写したと言うことなのだろう。そこから、この人はこの絵のここに着目したのか、なんてのが分かる。共感する点もあるし、なんだここなのだろう?というものもあり、なかなか面白い。
そんな、鑑賞のポイントを学ぶこともできた。

正直、馴染みの薄かった明清絵画だが、館長の熱弁、板倉先生の楽しいトークで一気に引き込まれてしまった。
一見の価値ありですよ、これ。

★ 美術展情報

「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/10/28(Sat) - 12/17(Sun)
  • 開館時間 : 10:00 - 16:30
  • 休館日: 月曜日
  • 料金 : 一般1,000円 大学生・高校生 700円 中学生以下 無料
  • 公式サイト : 静嘉堂文庫美術館 | 開催中の展覧会・講演会
  • 図録
    静嘉堂文庫美術館でお馴染みの(?)ポケットサイズ図録です。カードと一緒に並べたけど、サイズ感がわかりますかね。
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  • 参考書







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