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美術 : 美術展、写真展紹介 ブログトップ
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「挿絵本の楽しみ ~響き合う文字と絵の世界~」展 時空を越えて理解し合えるメディアとしての挿絵本 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

静嘉堂文庫美術館で開催されたブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別の許可を得て撮影をさせてもらいました。通常は、撮影NGです。

収蔵書籍二十万点を誇る静嘉堂文庫美術館が、その中から今回選んだのは挿絵本。主に、日本は江戸時代、中国の書籍は明・清時代のものからチョイス。
図説入りの書籍は、現代では当たり前の存在だが、元々はそうではなかったとのこと。特に中国では、文字に対する絶対的な信仰のようなものがあったため、本に絵を入れるなどもってのほかだったそう。
しかし、時代が下るにつれ、本は特権階級の独占品ではなくなってくる。そうなると、より分かりやすいものを求める声が大きくなり、挿絵本が生まれてきたのでした。

そんな挿絵本を集める今回の企画展は、その内容別に五つのコーナーに分けて展示されています。それが、
  • Ⅰ.神仏をめぐる挿絵
  • Ⅱ.辞書・参考書をめぐる挿絵
  • Ⅲ.解説する挿絵
  • Ⅳ.記録する挿絵
  • Ⅴ.物語る挿絵
の五つ。

ゴシックの大聖堂は、建築の形をとった聖書だとか、文盲のためのラーニングシステムだと言われますが、仏教でもそれは同じこと。ありがたい経典も解読するのが難しかったり、そもそも文字が読めない人たちには猫に小判。やはり、イメージの力に頼ることになります。
今回の企画展では、「妙法蓮華経」の意味を絵巻物にした作品などが展示されています。
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中国で挿絵本をもっとも広める原動力となったのが“科挙”の参考書。科挙とは、隋の時代から、清朝末期まで続いた、官吏登用のための試験のこと。そう、国家公務員試験ですね。
科挙には儀礼・儀式に関する知識を問う問題なども出てきたそうですが、貴族の出でもなければそんなことを知っている者はいなかった。そのため、図入りでの解説本が大人気となったのです。
身分ごとに分かれていたスカーフ(ネクタイ?)の形を示している挿絵本などが展示されています。確かに、絵を見ればどんなものなのか一目瞭然。こりゃ、人気が出るはずです。
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江戸時代の日本では、絵入りの辞書・百科事典が編纂されています。「翼」「羽根」「尾(羽根)」など、鳥の各部位について分かり易く描かれているページが紹介されていましたが、こちらも挿絵の力は偉大。そして同時に、人々の知識欲がそれだけ向上していたということでもあるのでしょう。
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デッサン見本帳とでも言えばいいのでしょうか、絵のお手本としての挿絵本も多数、出版されています。このニーズはわかりますね。もちろん、絵画作品そのものを見ればいいのでしょうが、まとまって本の形になっていれば参照するのに便利。
でも、こうなると“挿絵”というよりは、絵の方がメインかも知れませんが。
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図入りでの記録簿としての挿絵本として、今回は旅行記や漂流記が取り上げられています。異国の風俗はまさに言葉では書き表せないものだったのでしょう。共通概念の確立していないモノを言葉だけで人に説明するのはほぼ不可能。図示することは必須です。
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挿絵本を、今回の展示では“目的別”、“対象読者(層)別”に分類した形になっています。ニーズがあってこそ、需要も大きくなっていくもの。挿絵本を発展させた“マーケットニーズ”はこんなにも多様なものがあったんですね。

★ 感想

「挿絵本の楽しみ」方ってどんなものなのだろうかと、展示を見る前は思っていましたが、なるほどこんな分類ができて、それぞれに特徴があるんだなと知って、深く納得。
そして、現代の我々にとっても挿絵が描かれていると、そこに何が書いてあるのか文字が読めなくても理解できます。中国語はもちろん、日本語も草書でサラサラと書かれていては判読不能。それでも、挿絵を見れば、身分ごとの役人の服装について説明してあるのね、と分かってしまう。そこには数百年の時と、国・文化の違いを超えて共通理解が成り立つ世界があるのでした。そう、それが挿絵本なんですね。時空だけでなく、文化の壁も越えるメディアとして機能しているんだと実感しました。
いやぁ、これは確かに 楽しい! おすすめです。

そうそう。細かい・小さな図も多いので、単眼鏡・オペラグラスの類を持参するといいでしょう。

★ 美術展情報

「挿絵本の楽しみ~響き合う文字と絵の世界~」展は下記の通り、開催中。

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「篠田桃紅 昔日の彼方に」展 @智美術館 104歳にして新作を作り続けるバイタリティに感服 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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智美術館で開催されている「篠田桃紅 昔日の彼方に」展の内覧会に参加してきました。
例によって、特別の許可を得て写真撮影しています。通常は撮影NGですので、ご注意を。

★ 展示内容

この3/28で104歳の誕生日を迎えられた篠田桃紅氏は、書家であり、墨絵画家であり、リトグラフまで手がけている美術家。
智美術館での個展は二度目。今回は書、抽象画、リトグラフなどを、旧作から最新作(今年作成!)まで五十点余りで構成している。

三好達治の詩を書いた(と思われる)作品。
篠田桃紅は、文字を文字として書いてしまうと、日本語の読めない人に理解してもらえない、と考える。そして、元々は文字であるだろうけど、読めなくても良くて、その造型・意匠を絵画の一部として捉えてもらおうとして作品化しているそうです。草書、元々が範読が難しいけど、確かにこの作品は厳しい。
この赤枠の作品、長らく米国のロックフェラー家で所蔵されていたそうです。その後、日本に戻って来た時、篠田桃紅はこの作品に使った紙(の残り)を保管していて、そして新たにそれを塚って作品を製作したのでした。それが奥に写っている作品。同じ紙ですが、経年変化したものはやはり色がだいぶ変わっていますね。
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どれも筆を使って、墨で描かれています。力強さと、赤い線のセンセーショナルなイメージと、見るものをガツッと掴むものがあります。
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いつもは工芸作品を展示する智美術館。そのためか、絵画作品の展示もちょっとユニーク。意外と見易くてグッドです。
文字なのか、何かをイメージした絵画なのか、図形なのか。大胆に墨で塗られた線と、繊細な線とが交差する作品。
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普通に文字として読める作品もあります。
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小倉百人一首に選ばれている在原業平の「ちはやぶる・・・」の歌をしたためた作品は、2016年作。103歳にして、絵画的な、抽象化された文字と、記号としての(読める)文字とを自在に使い分けるその自由さ・クリエイティビティに圧倒されます。
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こちらも同じく在原業平の「ちはやぶる・・・」をテーマにした作品。“からくれなゐに”染まる竜田川をイメージしたのだろうか、ハッとさせる朱が、流れ、乱れる様子が目に浮かびそう。
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凛とした姿が美しい人ですね。芯のある感じがひしひしと伝わってきます。迫力あります。
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なお、篠田桃紅は、自身の作品にタイトルを付けることをしないのだそうです。タイトルがあると、作品のイメージを固めてしまうのを嫌ってのこと。見る人が自由に見て欲しいとの願いからだそうだ。
と言いつつ、今回の展示作には全てタイトルが付いている。これは、長年、篠田桃紅の作品を扱っているギャラリーが、篠田桃紅の許しを得て付けたものとのこと。

★ 感想

私が篠田桃紅の名前を知ったのは、最初の智美術館のイベントに参加した時のこと。「智美術館の設立者である菊池智は篠田桃紅と旧知の仲だったそうです。その縁で智美術館のロビーや、展示室へと降りていく螺旋階段の壁面に篠田桃紅の作品が使われています。」という説明を聞いたのが“初めまして”でした。

「女」の一字をデフォルメした作品。女性が佇んでいるようなイメージ。美術館に入ると、目の前にドーンと飾られています。菊池智が、自分の代わりに「女」がお出迎えしている感じを出したとのこと。
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「草・行・真」の三文字を使った“壁画”。だけど、知らないとその字が描かれているとはわからないと思います。
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年齢が云々関係なく、観て楽しい、そして惹かれる作品が一杯。「ちはやぶる・・・」の作品(群)が私は気に入りました。文字として読ませる作品もあれば、紅葉が水面に漂いつつ流れゆくイメージを感じさせるものもあり。その自在なイメージの変化が面白い。
ずいぶんとタッチの異なる作品が並んでいるので、その中で自分の好きなものを見つけるのも楽しそう。

工芸作品がメインの智美術館ですが、いつもと違う今回の企画展もグッド。おすすめです。

★ 美術展情報

「篠田桃紅 昔日の彼方に」展は下記の通り、開催中。






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「これぞ暁斎!世界が認めたその画力」展 : これぞ、私の暁斎! という一枚を選ぼう [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の特別展「ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」展のブロガー特別内覧会へ参加してきました。例によって、特別に許可をもらい、写真撮影しています。

河鍋暁斎(1831─1889)は、幕末から明治を生きた絵師。浮世絵師の歌川国芳に師事した後、狩野派を学ぶ。その後、独自の画風を確立し、仏画から戯画、春画まで多彩な作品を残した。
本展は、世界屈指の暁斎コレクションとして知られるイスラエル・ゴールドマン氏所蔵の作品から選ばれた逸品ぞろいの企画展。

構成は以下の通り。
  • 序章 出会い:ゴールドマン コレクションの始まり
  • 第1章 万国飛:世界を飛び回った鴉たち
  • 第2章 躍動するいのち:動物たちの世界
  • 第3章 幕末明治:転換期のざわめきとにぎわい
  • 第4章 戯れる:福と笑いをもたらす守り神
  • 第5章 百鬼繚乱:異界への誘い
  • 第6章 祈る:仏と神仙、戦塵への尊崇

暁斎の描く鴉は当時から有名だったそうで、「鴉の画家」と呼ばれていたのだそう。注文も(ホントか嘘か)百枚単位で来たそうだ。一体、何羽の鴉を描いたのだろうか。今回も十点以上の鴉の絵が並んでいる。
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でも、描いたのは(もちろん)鴉だけではない。色々な動物を描いている。真面目に、狩野派風に描いている作品ももちろんあるが、ユーモラスに擬人化された動物たちも一杯。鳥獣戯画の影響を受けているのだろうか。
イソップ物語の挿絵なども描いている。これはどの話のどの場面だろうかと想像しながら見るという、また別の楽しみ方もできます。ちなみに、写真に写っているのはイソップ物語じゃないけど・・・。
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時代が明治に移ると、それまで禁教となっていたキリスト教が“解禁”となる。当時は、キリスト教だけではなく、色々な宗教が活気づいていたようだ。暁斎はそんな様子を、磔刑のキリストの足元にブッダや孔子などが戯れる(?)構図で描いている。
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ユーモラスな画風の作品も多いが、その画力は確かに本物。深山幽谷を描いた作品は、その幽玄さが際立っている。空を飛ぶ鳥を描けば、躍動感のある力強い画風だ。
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百鬼夜行の屏風絵。六曲一双の大作だ。どの鬼(?)もユニークで、恐ろしさよりはユーモアを感じさせるものばかり。右から左へと続く行列は大賑わい。
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国立国会図書館デジタルコレクション - 一休骸骨」という書籍がある。“Memento mori”、死を忘れてはいけない、人はすべからく死すべき運命にある、と言うような話だ。
暁斎は、一休禅師と地獄太夫、そして骸骨を合わせて描いている。地獄太夫とは、地獄を描いた打ち掛けを着た遊女。骸骨は三味線を弾いている。La Danse Macabre(死の舞踏)を彷彿とさせる作品だ。
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暁斎は、劇画のような作品も描いている。元寇を描いた作品では、元の船舶が吹き飛んでいる。“ドカーン!”と、漫画のような飾り文字も描かれていそうな雰囲気。
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そして、春画も描いています。こちらも、エロティシズムよりはユーモア優先。ちょっと笑っちゃうものばかり。どんな作品かは実際に見てみてください。
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★ 感想

東京都美術館に信じられないくらいの大行列ができたのは、去年の「若冲展」。伊藤若冲は、今や“大スター”だ。そんな若冲に続けとばかり、ピックアップされたのが河鍋暁斎。確かに、その画風は多彩だし、作品はどれも魅力的。スターダムに躍り出る可能性は高そう。ただ、ファンタジーな雰囲気の漂う若冲に対して、明治という時代の波に洗われた暁斎は、ちょっとバタ臭いところもあるかな。その辺り、好き嫌いが出るかも。私は気に入りましたけど。

特に気に入った作品は、「第4章 戯れる:福と笑いをもたらす守り神」のコーナーで展示されている鍾馗様を描いたもの。「「江戸と北京-18世紀の都市と暮らし-」展 二百年前の二都物語。似てる?似ていない?」でも、清の時代に北京で描かれた鍾馗様の絵を見たばかりだが、暁斎のそれは何とも言えないヒネりが加わっている。皇帝のために鬼を退治するのが鍾馗様なのに、その鬼をペットか召使い、いや、オモチャや(河童を捕まえる)囮にまでしてしまっている。仲がいいのか悪いのか、不思議な凸凹コンビという雰囲気。
中でも、鬼をボールのごとく空高く蹴上げる鍾馗様は、服をはためかせ、何とも躍動感のある豪快な姿。これ、一体どういう意味なの?何を言いたいの??と思ってしまう。が、面倒くさいことは考えず、クスッとすればいいのかも知れない。いやぁ、いい絵ですよ、これ。
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そんな暁斎の魅力を伝えるべく、音声ガイドにも力を入れているようです。
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さらには記念写真コーナーも美術館外に設けてありました。
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とにかく多彩な作品が並んでいるので、説明が難しい。これはもう、見てもらうしかなさそうです。会期もあと少し。急いで見に行ってくださいな。

★ 美術展情報

ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」展は下記の通り、開催中。






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