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美術 : 美術展、写真展紹介 ブログトップ
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静嘉堂文庫美術館 『歌川国貞』展 江戸で一番人気の売れっ子絵師は 国貞 だった [美術 : 美術展、写真展紹介]

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静嘉堂文庫美術館で開催中の『歌川国貞』展の、トークショー&ブロガー内覧会に参加してきました。例によって、特別な許可をもらって写真撮影しています。

★ 展示内容

以下、トークショーとギャラリートークで聞いた話を交え、展示作品の一部を紹介していきます。

まずは 歌川国貞 について。
浮世絵というと北斎や歌麿、最近では歌川国芳などが人気になっている。が、江戸時代で一番の人気絵師は、実はこの歌川国貞でした。美人画、役者絵を得意とした国貞は数万点の作品を残している。と言うのも、二十代半ばから七十代で亡くなるまで人気が持続した、生涯現役の人だったのです。活動機関で言うと、喜多川歌麿は十数年、安藤広重は三十五年程度、東洲斎写楽に至っては一年足らず。それに比べて五十年ものあいだ、人気絵師として作品を発表し続けたのが歌川国貞なのでした。

そんな歌川国貞の作品を静嘉堂文庫は四千枚を所有している。特徴として、画帖仕立てになっているものが多い。これは岩崎家のコレクションとして、女性陣がファッションブックのように楽しむため、見易いように画帖にしたと考えられている。ただ、記録には残っていないので、本当の理由は不明。
裏表に作品が貼ってあるので、このような美術展での展示には不向きなのが難点。でも、おかげで、色味がよく保存されているという功績もあった。紫やピンクなど、光に弱い絵の具が使われているが、それもきれいに残っている。

そんな岩崎家の女性陣も楽しんだ浮世絵、錦絵だが、江戸時代にはまさに女性のファッションの流行を伝える媒体だった。そのため、花魁などは元より、町人(の娘)をモデルにしたものが多いのが特徴。国貞は近所の女性たちをモデルにしていたらしい。
浮世絵に対する、当時の庶民の感覚はラフだった。
鏡台では鏡に顔を近づけたいがため、引き出しは手前ではなく、横に引き出すようになっている。
鉄漿を付けるときに、失敗して口の周りを黒くしくてしまった場面が描かれ作品もある。
依頼を受けて描いているものもある。


「浮世絵」ってそんなに詳しくないよ、って人も安心。展示の最初に「浮世絵の制作工程を描いた浮世絵」が展示されていて、それを使って詳しく説明されています。
ちなみに、描かれているのはみんな女性ですが、実際はほとんどが男性の仕事だったようです。
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版画である浮世絵。その「摺り」工程には様々なテクニックがあって、色の濃淡やグラデーションの表現などなどによって、浮世絵の表現力を高めています。
その意味では、この企画展は「歌川国貞」展となっているものの、浮世絵制作には彫り師、摺師、そして版元(出版者)などがチームとなった芸術なのでありました。
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江戸時代、吉原は「北」、品川は「南」と呼ばれた。そのため、吉原の花魁を描いたこれら作品群には「北国五色墨」のシリーズ銘が付いている。
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「江戸自慢」シリーズは、江戸の名所をモチーフに、言葉遊び的な感じで庶民の女性たちを描いている。当時の風俗、生活様式がよくわかるものになっているのが特徴。例えば、赤ん坊に添い寝した母親は、半球状の蚊帳に入っている。こんなポータブルな蚊帳が当時、使われていたのだろう。
そして、この蚊帳の網目の表現は彫り師、摺師の超絶テクニックも感じられるものとなっている。
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当時、流行した髪型や着物(の柄)がよくわかるシリーズ。浮世絵は庶民にも人気で、ファッション誌感覚で購入し、真似をしたらしい。
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「今風化粧鏡」シリーズは、鏡に映った女性の顔を描いた、と言う体裁をとっている。普通は面に見せない表情であるはずの、化粧時の姿を描くと言うことで、より女性の内面・秘めた姿を表している。
左端の作品では、お歯黒を塗っているシーンだが、失敗したのか口の周りも黒くなってしまっている。「あっ!」と心の中で叫んでいるような表情が見られ、なんとも艶めかしい。
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紹介された流行は女性のファッションだけではない。海外から伝来したガラス製の行灯(シャンデリアですね)が江戸にもたらされ、興行的に展示されたりした。実際は、輸入品のコピー製品(長崎で作られた?)だったらしいが、そんなニュースを取り入れた浮世絵も作られている。浮世絵は写真週刊誌的な役割も持っていたのだ。
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もちろん、歌舞伎の芝居・役者も浮世絵のモチーフとして大人気だった。
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源氏物語を今風(と言っても、室町時代)にアレンジしたシリーズ。大奥を連想させたためか、大ヒットしたそうだ。
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★ 感想

トークショーは、歌川国貞を扱った書籍も出している、太田記念美術館 主席学芸員
日野原さん、この企画展のキュレーションをした静嘉堂文庫 主任司書 成澤さん、そして青い日記帳のTakさんでした。
ちなみに、名物(?)館長の河野さんは、最後にちょこっと挨拶しただけ。熱く語りすぎるので自粛したのかな?!
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最近の浮世絵人気は、「これまでに知られていなかった、知る人ぞ知る」的な絵師を発掘してきて、どーんとスターダムに押し上げる、的な感じですが、今回の企画展は王道中の王道。学芸員さんも念を押していたんですが、“美術品を鑑賞する!”というかしこまった感覚は捨て、江戸時代の庶民の感覚を共有するような形で、気軽に見て欲しいとのこと。

その説明通り、当時の人々の生活様式がよく見て取れる作品が多く、その意味でとても楽しい企画展でした。
吉原を「北」、品川を「南」と呼ぶ隠語は、今も似たような表現を使うし、女性の化粧をしている姿を覗き見てみたいなんて感覚も、時代を超えて共感できちゃいます。
逆に、初鰹を先を争って買い求める姿は、今以上に流行に、そして“粋”なことに敏感・貪欲なところを見せつけていて、そこまではできないなぁと思ったりもしちゃいました。まあ、iPhoneの新機種発売に行列を作る現代人も似たようなものか。人は数百年では変わらないようですね。

そんな感じで、一枚ずつ“読み解いていく”感じで見ることになるので、意外と時間が掛かりますよ、観賞に。夕方16:30には閉館になってしまいますし、入館は16:00までなので、早めに来館することをおすすめします。

★ 美術展情報

「歌川国貞」展は下記の通り、開催中。






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「第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」 これ、どうやって作っているんだろう?! [美術 : 美術展、写真展紹介]

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智美術館で開催中の「第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」展 ブロガー内覧会に行ってきました。
例によって特別な許可を得て写真撮影してます。

★ 菊池ビエンナーレとは

前回(「「第6回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」展 王道あり、不思議ちゃんあり、振り幅の大きさ、かなりです」)に続いて、第7回のビエンナーレも見てきました。

公式サイトによると
公益財団法人菊池美術財団は、21世紀の陶芸界の新たな展開を探ることを目的に、全国から作品を公募し、2004 年から隔年で「菊池ビエンナーレ」を開催しています。
第7回を迎えた今回は、日本国内を中心に総数322点のご応募をいただき、第1次画像審査、第2次作品審査を通過した入選作52点(その内入賞5点)が選出されました。
とあります。

★ 展示内容

陶芸というと有田焼だの伊万里焼だのに代表される茶碗や皿などを思い浮かべますが、ここ智美術館のビエンナーレでは、そんな伝統的な技を極めた作品ももちろん観られるし、アートを表現する“素材”が土(を焼いたもの)という縛りだけで、テーマはバラエティーに富んだものが入選していて、“モダンアート”の一つの分野として楽しめるようになってます。

例えば、大賞を受賞した和田的さんの作品は、壺か花瓶のようでいて、その用途にはどうやら使えなさそう。
さらにはこの作品、型に嵌めて作っていそうな程シャープなフォルムですが、実は轆轤である程度成型した後、手作業で彫刻刀のようなもので削っているのだそうです。いやぁ、作業が大変そう。
ちなみに、一般に白磁器に使われる土は全国の何カ所かで取れるそうですが、削り出しに耐えられるものは天草地方の土だけなのだとか。
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優秀賞 の津守愛香さんの作品は「人魚仏」という題名が付いてます。前回(第6回)には「サムライ・マーメイド」で優秀賞を受賞しているので、二回連続なんですね。しかも、またまた“人魚”がモチーフ。
同じ土で作られているせいか、土偶のような印象もある不思議な表情をした人魚。この眼差しに惹かれてしまいます。
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古代の土器というと、奨励賞の釣光穂さんの作品は“縄文式土器”を連想させます。でも、縄文式土器の方は土の表面に縄を転がして縄の模様を付けたもの。それに対してこちらは、土で“縄”を作り、それを編み上げるような感じで積み上げ、焼いたもの。いやぁ、こんなのよく作れますね。焼く前の土の状態だと、自重で潰れてしまいそう。さらには焼いた時にパリパリと粉々になってしまいそう。これは是非、会場で実物を肉眼で見て欲しいです。いや、ビックリの作品。
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奨励賞の田島正仁さんは、人間国宝 徳田八十吉さんのお弟子さんだそうで、彩釉鉢の青が鮮やか。五回に分けて(温度を変えて?)釉薬を流しながら焼くことによって、こんなグラデーションが生み出されるのだそうです。これはもう、陶芸の王道という感じですね。それでいてモダンな印象の色鮮やかさがカッコいい。
ちなみに、鉢の外側にも同様の模様があるのですが、それは実物を見て確かめください。
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他の入選作にも楽しそうなものたくさん。
ただの、円形の鉢(皿)のようなのに、側面の一部分が細い糸状の簾のような感じになっていて、しかも所々、切れていたり。持つとパリッといってしまいそう。
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葉っぱの気孔のような裂け目、切れ目が空いているこの組み作品には「HORIZON」というタイトルが付いていましたが、私には葉っぱの表面にしか思えなかった。
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さて、これは野菜がモチーフ? いや、花かな?
「トーテム」とタイトルにあるので、何かを積み重ねていったイメージなのでしょう。で、何を?
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将棋盤です。それ以上でも、それ以外でもなく。駒もちゃんとあります。しかも、“歩”の裏は“と”になっているそうです。もちろん、作品に触れることはできないので、残念ながら確かめて写真に撮ることはできませんでしたが。。。
なんでも、有名な棋譜をこの盤上では再現しているそうです。しかも、ちょっとだけそこから外れているらしい。そこまで将棋に詳しくないので、我こそはという人は是非、チェックしてみてください。
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金属?いや、これも陶芸(土)です。細かいパーツを組み上げていく、地道な作業が目に浮かびます。最近の若い陶芸作家さんには“地道な作業”好きな人が多いそうですが、それにしても凄い。
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ベテランの作家さんも負けず劣らず、新たな造型にチャレンジされているようです。潰れた箱が繋がっていたり、薄い板が重なっていたり。
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★ 感想

まずは、陶芸の自由さを知ることができる企画展です。用の美を追究した、伝統を引き継いだ作品もあれば、彫刻が素材を削っていくのに対して、土を積み上げていくことで好きなフォルムを作り出している作品もあり、バリエーション豊か。
これ、どうやって作るの? これ、本当に焼き物(陶器)なの? そして、これ、何を言いたいの?まで、“?”も一杯の作品群は、見ていて飽きません。
智美術館の良いところは、そんな作品のほとんどがケースなどに覆われていないので、顔を近づけてじっくりと見ることができること。ただ、気をつけないと、思わず手で触りたくなっちゃうんですよね。もちろん、それはNGですから、気をつけてください。

私が気に入ったのは、上記の釣光穂さんの作品。縄文式土器のような奴です。あれは本当に触って確かめたい衝動が抑えられないほど。見ると、(土でできた)縄の端が垂れ下がっていたりするんですよ。いや、すごい。

ということで、自分のお気に入りの作品・作家さんを見つけるにはいい企画展です。おすすめ。

★ 美術展情報


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「第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/12/16(Sat) - 2018/3/18(Sun)
  • 開館時間 : 11:00 - 18:00
  • 休館日: 月曜日, 2/12 (2/11は開館)
  • 料金 : 一般1,000円 大学生 800円 小中高生 500円
  • 公式サイト : 最新の展覧会 | 智美術館 - Musee Tomo
  • 図録 1500円
  • 受賞作家&審査員によるトーク(予約不要・聴講無料・展示観覧料が必要)
    • 1/27(Sat) 15:00 津守愛香(優秀賞)、釣光穂(奨励賞)、杉浦康益(審査員)
    • 2/10(Sat) 15:00 中田雅巳(奨励賞)、田島正仁(奨励賞)、唐澤昌宏(審査員)
    • 3/3(Sat) 15:00 和田的(大賞)、花里麻理(審査員)





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「生誕100年 ユージン・スミス写真展」:写真が語るヒューマン・ドラマの説得力 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で「生誕100年 ユージン・スミス写真展」を観てきました。

★ 展示内容

W.ユージン・スミス(1918-1978)は、従軍カメラマンとしてキャリアをスタートさせ、第二次大戦の沖縄戦などを取材しています。が、その地で重症を負い、数年、療養に専念することになります。回復後は一転、ヒューマン・ドキュメンタリー写真家として再スタート。その際に発表された、幼い子どもたちが刺激の暗闇から明るい場所へと向かっていく「楽園へのあゆみ The Walk to Paradise Garden」はあまりに有名ですね。

公式サイトの説明によると、
本展覧会は、生誕100年を回顧するもので、スミス自身が生前にネガ、作品保管を寄託したアリゾナ大学クリエイティヴ写真センターによる協力のもと、同館所蔵の貴重なヴィンテージ・プリント作品を150点展示します。情報あふれる現代社会に生きる私たちにとって、ジャーナリズムの原点をいま一度見つめ直すきっかけになることでしょう。
とのこと。

展示構成は以下の通りで、年代順+テーマ別。Lifeでの特集や、刊行された写真集ごとにまとまっている。また、併せてそれら作品が掲載されているLife誌や写真集なども展示されている。
  1. 初期作品
  2. 太平洋戦争
  3. カントリー・ドクター
  4. イギリス
  5. スペインの村
  6. 助産師モード
  7. 化学の君臨
  8. 季節農場労働
  9. 慈悲の人
  10. ピッツバーグ
  11. ロフトの暮らし
  12. 日立
  13. 水俣

まず始め、会場入り口に「楽園へのあゆみ The Walk to Paradise Garden」のポスターが飾られている。これだけは撮影OK。 #ユージン・スミス のハッシュタグを付けてSNSに投稿して、とのこと。
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なお、本物(のプリント)ももちろん展示されています。

「太平洋戦争」では、投降する日本人の姿が写されています。掴まったら殺されると思い込まされていたからなのか、恐怖のあまりに表情を失った顔がその状況を語ってくれています。

「カントリー・ドクター」は戦後、田舎の医者の“日常”を追ったもの。雨の中をカバン一つ持って往診に向かう医師の姿。老人を診察し、死期が近いことをみて司祭に電話をする医師。お産を介助するも、母子共に死なせてしまったあと、呆然としながらお茶を飲む医師。子どもたちに囲まれながら、予防接種をする医師。一人で全てをこなし、その町の人々の喜びと悲しみに立ち会うその姿は、まさにヒューマン・ドラマです。胸打たれ、涙がこぼれそうになるくらいに心を揺さぶられるシリーズ。写真の持つ力を再認識できるでしょう。

「水俣」は、日本にゆかりの深いユージン・スミスが見た、水俣病の問題を取材した作品群。水俣湾の漁の様子から、チッソの廃液、そして住民集会や裁判の様子など、その全体像を捉え、示そうとしている。

★ 感想

改めて、写真の持つ力を感じさせる作品群でした。特に、「カントリー・ドクター」や「助産師モード」(“モード”は人名です)には一瞬でその世界に引きこまれてしまった感じ。映画を一本、ドラマをワンクール観たくらいの重み。
寡黙なドクターはカメラを、ユージン・スミスを全く意識していない。そこまでの信頼関係を築くまでにはどんな過程があったのだろうか。その結果、あの表情を写すことができたのだから、その撮影姿勢に関してもただただ驚くばかり。あんな素の表情を撮れるなんて。お産で母子を死なせてしまった後のあの顔は何とも言えない。何時間、いや十数時間もの“格闘”の末、最悪の結果となってしまった。その虚脱感、疲労感、まだ後悔することもできない虚無感、そんなドラマがフラッシュバックのように見えてくる感じだ。あの表情が全てを語っている。
いやぁ、凄いです。

若い頃、日本人カメラマンと出会い、感銘を受けたのがきっかけでプロの道に進むようになったとか。従軍カメラマンとしても沖縄で撮影をしたりと、日本との関係も深いユージン・スミスさん。「日立」や「水俣」のシリーズでは興味本位ではない、暖かな視線を感じられました。現場に溶け込んで撮影していたんでしょうね、こちらも。


なんと言うか、「良いものを見た」というのがまとめの感想。感想を細かく語るのもおこがましい気がしちゃうほど感動。観るべきです、これは。

★ 写真展情報

「生誕100年 ユージン・スミス写真展」は下記の通り、開催中。





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