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「典雅と奇想 明末清初の中国名画展」@泉屋博古館分館 水墨画ってこんなに楽しいものだったんですね [美術 : 美術展、写真展紹介]

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ブロガー内覧会に行ってきました。例によって、特別な許可を得て、写真撮影させてもらいました。通常は撮影禁止です。

★ 展示内容

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展」の記事で紹介した企画展とコラボレーションしている、もう一方の企画展です。こちらは泉屋博古館 住友コレクションをベースにした展示です。それにしても、どちらもすごいコレクションですね。

さて、内覧会は始めに、野地館長による概説から。あちらの館長とは対照的に、野地館長はあくまでも静かに、でも内容は熱く語る感じの方です。以下、概略を列挙。
  • 見た目はずいぶん異なっているが。両館のポスターも実はコラボレーションを意識したものになっている。あちらは猫、そしてこちらは魚をメインにしている。実はこれ、二枚並べると猫が魚を狙っているという趣向。
  • 根津美術館でも南宋絵画展が行われて、話題になった。この明末清初(日本では江戸時代初期にあたる)にも注目していって欲しい。講演会なども行われ(下記参照)、誰でも参加可能なので聞きに来て欲しい。
  • 住友コレクションからの展示は巻物や書籍が多い。どうしても、一度に見せられる部分が少ない。そのため、会期中に二十回は“ページ送り”をして、色々な作品(部分)を観てもらうようにする。
  • 大幅な展示替え(11/20)もあり、企画展も前期・後期と分けている。
とのことでした。
板倉先生は、ギャラリートークで色々と解説。以下、その内容も織り交ぜて。
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展示構成は以下の通り。
  • Ⅰ 文人墨戯
  • Ⅱ 明末奇想派
  • Ⅲ 都市と地方
  • Ⅳ 遺民と弐臣
  • Ⅴ 明末四和尚
  • Ⅵ 清初の正統派、四天呉惲

漢民族による明朝が衰えていき、ついには消え去る。そして、北方の女真族による王朝が建ち、清朝が始まる。まさに激動の時代。そんな中だからこそ、文人たちや職人たちも新たな絵画の形を試し、新規の作品を生み出していった。

文人画で注目するのは徐渭(じょせい)の作品。今回、東京国立博物館の所蔵品と、この泉屋博古館所蔵作品の二店を並べて展示することができた。これは初の試み。
妻を殺害してしまったなど、プライベートでは色々あった徐渭だが、作品は、周到な筆の技を駆使したもの。一気呵成に描いたように見せていて、墨のぼかしを活かす場所をきちんと空けておいてから筆を入れたりして、綿密な計画が為されてから描かれたと思われる。
作品は、酒の肴を描いたもの。客人をもてなす気持ちの表れ。

明末は奇想の時代でもあった。それまでの伝統的な造型に加え、より自由な描写を採り入れている。江戸時代の(日本の)文人たちも、そんな作品に憧れを懐いていた。
北宋絵画は近景の風景を大きく描く。だが、それを無視して遠近を同等に描いたりする。さらには、重力を無視したかのような、浮遊感のある山々の姿を描いたものもある。そしてまた、着色をした作品もある。自由な、実験的な作品がこの時代に多く現れてきた。
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明の時代には、江南地方で多くの都市が発展していった。なかでも蘇州は交易も盛んで、文人たちによる芸術活動と共に、職人たちによる工芸品の生産も盛んであった。
李士達らによる山水画には往古の詩が引用されているものがあり、それをモチーフにした作品は、“知っている人には分かる”ものになっている。
また、筆遣いでは“かすれ”と呼ばれる技法が用いられたものが多く、岩の表現などに適用されている。全体的に動きを感じさせる表現だ。それは、西洋絵画の技法ともまた違い、当時の文人・職人たちが実験的に編み出していったオリジナルの技法。
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清朝が始まる。だが、女真族は巨大国家経営には不慣れであった。そのため、明の時代の役人たちを多く“再雇用”する。そんな人々は「弐臣」と呼ばれる。一方で、それを潔しとしない人々もいて、野に下っていった。彼らは「遺民」と呼ばれる。
仏門に入る人も多く、そんな遺民の中で「四和尚」と言われる石濤(せきとう)、漸江(ぜんこう)、石溪(せっけい)、八大山人(はちだいさんじん)が文人画で大いに活躍した。
住友コレクションは、この四和尚の作品に関しては世界に冠たるもの。世界中の研究者がこのコレクションを参照している。中でも石濤の作品群は秀逸。重要文化財に指定されているものもある。複雑な色使いが特色。実は唐の時代の絵画も色があり、色使いにルールがあった。距離・奥行きを色で表している物で、青緑水墨画と呼ばれている。そのルールを破った作品を石濤は描いている。個性を主張し、禅の理論で変革を起こしたのだ。岩の表面に赤を使っている辺りを観て欲しい。
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八大山人は擬人化が得意。一般に中国絵画は擬人化がヘタ。だが、彼の作品はしっかりと“キャラ立ち”している。
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★ 感想

板倉先生の話がまたも、日をおかずして聴けました。とっつきにくい感じのする山水画、水墨画ですが、こんな点に注目すると楽しめるのね、と再度、認識。またまた楽しいお話でした。

奇想派のネーミング通りの作品が多く、面白かったですよ。特に、展示No.5の米万鍾(べいばんしょう)「石柱図」は、山全体(いや、巨大な岩?)が宙に浮いたような絵。ルネ・マグリッドの「ピレネーの城」という作品があるが、あれは巨大な岩が海の上に浮かんでいる作品だ。それよりも三百年程前にこんな不思議な作品が描かれていたとは。どちらも浮遊感としては一緒だが、米万鍾の描く山(岩?)は造形的にも凝っている。天空の城のルーツはもしかしたらこれか? なにせ、スウィフトの「ガリヴァー旅行記」だって十八世紀初頭の作品。なんか、そんな想像(妄想?)が膨らんできた。

水墨画にこれほど「色」が使われているとは知りませんでした。いや、これまでも作品を観ていたものの、意識がなかったために気が付かなかっただけだったのかも。
墨の濃淡で遠近感を表現していることは知っていましたが、色分けすることによる表現なんてのもあったんですね。まあ、石濤の作品はそのルールを破っているということなので、いきなり応用問題から入ってしまった感じ。ちょいと、ベースになる知識を仕入れておいた方がいいかなと思った次第です。「奇想」を楽しむには、そのもととなる「基本」「基準」を知らないといけないですから。

それにしても、こんな企画展が二つ同時に開催できるほど、日本には有数のコレクションがあったんですね。明清絵画、明末清初、中国名画のブームが来るかな、これから?! そのはしりとして、この二つの企画展、必見でしょう。

★ 美術展情報

「典雅と奇想 明末清初の中国名画」展は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/11/3(Fri) - 12/10(Sun) / 前期 11/3 - 11/19, 後期 11/21 - 12/10
  • 開館時間 : 10:00 - 17:00
  • 休館日: 月曜日
  • 料金 : 一般800円 学生 600円 中学生以下 無料 / 静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展のチケット持参で20%off
  • 公式サイト : 東京:展示会情報|泉屋博古館 住友コレクション
  • 関連イベント:
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    • 11/25(Sat) 15:00-16:00 ゲスト・トーク ゲスト:板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所・情報学環教授)
    • 11/11(Sat), 12/2(Sat):ギャラリー・トーク  ナビゲーター:野地耕一郎(泉屋博古館 分館長)

    以下のイベントは開催場所が異なります。静嘉堂文庫美術館地下講堂での開催です。お間違いなきよう。 各回とも 定員120 名、10:00から整理券配布 (静嘉堂文庫美術館の入館券が必要です)。11:00開始。
    1. 11/19(Sun) :講演会「豊かなる明末清初の絵画-倣古と奇想」 板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所・情報学環教授)
    2. 11/25(Sat):対談「明末清初の書-連綿趣味の魅力を語る」 髙木聖雨氏(大東文化大学教授) ・富田淳氏(東京国立博物館学芸企画部部長)
  • 図録 「典雅と奇想 明末清初の中国名画
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