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「生きている理由」 悲劇の王女の青春時代を大胆に想い描く。なぜ、男装の麗人となったのか [読書 : 読んだ本の紹介]

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★あらすじ

清朝末期、皇族の家系に生まれながら、日本人の養女となり(籍は入っていなかったのだが)、戦後になって日本軍に協力したとして処刑された女性がいた。それが主人公の愛新覺羅顯㺭(あいしんかくら けんし)、日本名 川島芳子だ。

清朝は終わりを迎えようとしていた。西太后は虚勢を張り、欧米列強に宣戦布告をしたが、こうして紫禁城にまで兵が押し寄せてくる状況となってしまった。そんな時、大陸浪人の川島浪速が彼らの前に現れ、上手く手引きをして無事に落ち延びさせたのだ。そしてこの時から芳子の父である粛親王 善耆は川島を信頼し、そして清朝復興の夢を彼に託すようになった。
粛親王は日本からの協力を得るため、繋がりを強めようとした。息子を川島に預け、日本留学させた。だがその子は病死してしまう。その後に養女として日本に送り込まれたのが芳子だった。その時、七歳。

それまで王女として扱われていた芳子は、王女ではなくなる。だが、普通のことも違っていた。羽振りの良かった川島は護衛として書生を芳子に付ける。護衛役は小学校の教室の中にまで入ってきていた。そんな感じなので、なかなか友だちができない。彼女を持ち上げ、へりくだってくる同級生は多かったのだが。
芯の強い彼女は養父に言い、自分が護身術を身につける約束で、護衛を付けることをやめさせた。

川島家が松本に移り住み、芳子は女子高生となった。ここでは、護衛役は付かなかったものの、馬に乗っての登下校。さすがは王女。容姿端麗で女学生たちからのラブレターが日々、山のように届く状態。松本連隊の若い軍人たちの間でも評判になっていた。

そんなある朝、事件は起きる。松本連隊の山家少尉が街頭で警備に当たっていた時、いつものように乗馬で登校してきた芳子の目の前で破裂音がとどろいた。驚いた馬は暴れだし、芳子は振り落とされてしまったのだ。山家少尉は咄嗟に彼女の身体を受け止めた。そう。それが二人の出会いだった。

★基本データ

作者松岡圭祐
発行元講談社(講談社文庫)
発行年2017
ISBN9784062937832

★ 感想

冒頭に「この小説は史実から発想された」とあり、序文の冒頭は「かつて川島芳子という女性がいた。」の一文で始まる。なかなか印象的。
清朝の皇族でありながら日本人として育てられ、しかも若くして“女を捨て”、男装してその後を生きていた人。交遊録も華やか。ところが戦後、スパイだと疑われ、中国政府によって処刑されてしまった悲劇の王女。さらにはその生涯に謎も多く、生年月日も諸説あるらしい。
ノンフィクションならまだしも、そんな“史実”が強烈すぎて、逆に小説にするのにはそれらが“制約”となってしまいそう。
でも、推理小説でその力量を発揮している著者だけあって、知られている事実と、謎の部分とを上手く繋げて一人の女性像を描きだしている。そう言えば、「探偵の探偵」や「万能鑑定士Q」など、女の子を主人公にした小説を数多く出しているんでしたね、この著者は。私も「探偵の探偵」は読みました。なかなか魅力的な主人公でした。それを考えると、川島芳子を主人公にした小説はこの人をして書かずして誰が書く?という感じだったのかも。
なぜ彼女は男装をしたのか。なぜ、養女となりながら籍は入れられずにいたのか(そのため、処刑されてしまうことになるのだが)、養父との関係はどうだったのか。色々と謎はあるが、納得感のあるストーリーになっていて、これが史実だったのかもと思い込んでしまいそうでした。

それにしても川島浪速の存在もかなり気になりました。あの時代だったからこそ、そしてもちろんある程度の資産家であったからこそですが、「国家を再興する」などということを個人的な想いで取り組めたってのがすごいなと。“大陸浪人”とは目にしたことのある言葉でしたが、こんなにも豪快な人もいたんですね。北一輝やら、石原莞爾やら、触ると危なそうだけど、“どんな人だったのか知りたくなった”マイリスト入りです。

解説によると続編もありそう。そちらも楽しみです。

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