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「興亡の世界史 通商国家カルタゴ」 あの時、ハンニバルがローマへの進撃をやめなかったら。。。 [読書 : 読んだ本の紹介]

通商国家カルタゴ.jpg

★あらすじ

紀元前1200年からのちの百年間、オリエント(今の中東の辺り)では青銅器時代から鉄器時代へと変容を遂げていた。その地に現れたのが「フェニキア人」。「フェニキア人」とは、ギリシア人たちによる呼称。ギリシアの東方から通商を目的にやって来た人々をこう呼んだ。元々は「フォイニクス」という、「フェニキア人」たちの特産品であった赤紫の染料の名前に由来する呼び名だ。ここからも、「フェニキア人」は海を越えて通商を行う人々であったことが分かる。以後、数百年の間、地中海はフェニキア人の海となっていく。
フェニキア人はアルファベットを生み出したことでも知られる。シナイ半島で元となる文字が使われ出したが、バラバラであった書式を統一したのが彼ら。彼らは通商を通してその文化も広めていった。だが、残念なことにパピルスや羊皮紙が公文書を残す主な媒体だったため、現在までに残っているものはない。
彼らの土地・国はレバノン山脈の西側、海に面した地。そこがフェニキア“本土”だ。ビュブロス、シドン、テュロスなどの都市が築かれた。そしてここから地中海へと出て行く。旧約聖書によると、テュロスの交易相手国はイオニア、ロドス島、イスラエル、ダマスクス、シェバ(紅海に面する都市)などなど。

そんなフェニキア人たちは、地中海に浮かぶ島々や、大陸の海岸線に、貿易の中継地としての都市を次々と建設していく。その一つが「カルタゴ」だ。
現在のチュニジア共和国の首都チュニスの近く、北アフリカ海岸に、船の碇のような形の岬が突き出している。そこに建設されたのがカルタゴ。フェニキア人たちがアフリカの原住民達から“租借”した土地で、実際に前五世紀までは毎年の貢租が支払われていたらしい。
カルタゴ建設時期に関しては、伝説では紀元前十二世紀のこととなっているが、諸説有り確定していない。考古学的には前八世紀後半の頃らしい。
カルタゴは、フェニキア“本土”のテュロスと、ジブラルタル海峡の先のイベリア半島南部の鉱山(銀・金・銅・錫・鉛)とを中継することでその地位を高めていく。初めは他の中継都市の一つであったが、軍事力を付けていくことにより、一歩、抜きん出ていく。
そんな中、フェニキア本土で大きな動きがある。アッシリア帝国が崩壊し、混乱の時代へと入っていったのだ。その機に乗じ、カルタゴはさらに力を付けていく。かのローマに対しても通商条約を結ぶなどして、海上帝国の地位を高めていった。かくして、地中海はカルタゴの海となったのだ。

★基本データ&目次

作者栗田伸子, 佐藤 育子
発行元講談社
発行年2016 (講談社学術文庫版)

  • 学術文庫版へのまえがき
  • プロローグ――地中海史の中のカルタゴ
  • 第一章 フェニキアの胎動
  • 第二章 本土フェニキアの歴史
  • 第三章 フェニキア人の西方展開
  • 第四章 カルタゴ海上「帝国」
  • 第五章 上陸した「帝国」
  • 第六章 カルタゴの宗教と社会
  • 第七章 対ローマ戦への道
  • 第八章 ハンニバル戦争
  • 第九章 フェニキアの海の終わり
  • エピローグ
  • 学術文庫版のあとがきにかえて
  • 参考文献
  • 年表
  • 人名・著作家名一覧

★ 感想

2009年に出版された「興亡の世界史」シリーズの一冊だったが、このシリーズが講談社学術文庫として再編・再出版されている。名前の通り、「最後は滅亡した」「歴史から姿を消した」国々の話を集めたシリーズなので、“読み物としての結末”は分かっている。そもそも、カルタゴがハンニバルの活躍空しく、三回のポエニ戦争の末に、文字通り地上から消されてしまったことは学校の世界史で勉強した通りだ。
そのため、彼ら自身が残した歴史的資料は乏しい。「歴史は勝者のみが語る」例に漏れず、カルタゴの研究も主にローマやギリシアの側に残された資料に頼っている。そんなハンディを負いながらも著者達研究者はカルタゴの姿を闇の底から引き上げてくれている。

学校で習ったものの、カルタゴがそれほどにすごい国だとは良くわかっていなかった。だが、まさに地中海の覇者であり、貿易を独占して栄えた強国だったことを本書で再認識した。「それにしてもカルタゴは滅ぼさねばならない」と演説のたびに訴えたというローマの大カトーの言葉の切実さもやっと理解できた感じだ。

それにしても、二千年以上前に地中海には貿易ネットワークが張り巡らされ、ハイウェイさながらに船が行き来していたとは。ヨーロッパ、アフリカ、中東と聞くと、今の時代ではどうしても“別々”という印象が強くなってしまう。だが、フェルナン・ブローデルが語るように、地中海を介して全ては繋がっていたんだなということも良くわかった。イベリア半島の銀山による“シルバーラッシュ”はこのネットワークなくしてあり得なかっただろうし、文化面でもアルファベットが広く普及したのもこのお蔭。うむ、壮大な話だ。勉強になりました。


それにしてもハンニバルさん、ローマを目前にして足踏みしてしまったのはなぜなのだろう?講和条約を結ぼうとしたのだろうけど、あと一歩、兵を進めていたらその後の世界は全く異なったものになっていたんでしょうね。


それにしてもこの「興亡の世界史」シリーズ、日本人の“好み”に合っているなぁ。滅びの美学、判官贔屓の心をくすぐられます。次はどれを読もうかな。

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コメント 2

JUNKO

確かに日本人好みの話ですね。判官びいきの国ですから。
by JUNKO (2017-09-07 20:48) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
これまでのイメージとは違った話も多く、そんな点でも楽しいシリーズです。
by ぶんじん (2017-09-08 06:39) 

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