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「ジャコメッティ」展@国立新美術館 見つめる眼差しは空間をも曲げる [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

「ジャコメッティ」展@国立新美術館 は12点の展示替えもあり、夏休みフェアも実施中 [広告]」で紹介した「ジャコメッティ」展に、Windamさんから招待券をもらって観に行ってきました。

展示構成は、ほぼ年代順 + テーマ別という感じ。彫刻にかけたジャコメッティの生涯を外観することができる。構成は以下の通り。
  1. 初期・キュビスム・シュルレアリスム
  2. 小像
  3. 女性立像
  4. 群像
  5. 書物のための下絵
  6. モデルを前にした製作
  7. マーグ家との交流
  8. 矢内原伊作
  9. パリの街とアトリエ
  10. 犬と猫
  11. スタンパ
  12. 静物
  13. ヴェネツィアの女
  14. チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト
  15. ジャコメッティと同時代の詩人たち
  16. 終わりなきパリ

「初期・キュビスム・シュルレアリスム」では、画家であった父の影響で自らも芸術の道に進み始めた頃の作品が並ぶ。
“コンポジション”などの作品は、まさにキュビスム。立方体、直方体(つまりは煉瓦のような形。でもブロンズ製)を組み合わせた作品が並ぶ。

モデルを前にして作品作りを始めたジャコメッティ。だが、そのモデルの姿・形状を見つめれば見つめるほど、空間と対象との関係性が“凝縮”していったのか、出来上がった「小像」は本当に小さなものになってしまった。これらもブロンズ製なのだが、余りに小さいため、作成途中で壊れてしまう(小刀に入れる力を誤るとすぐに崩れてしまったとか)。結果、後世に残せた作品は僅か。

「モデルを前にした製作」に苦労するジャコメッティ。“モデルの顔を「見える通りに」捉える”ことを目指した彼だが、今度はできた作品がどんどんと細長くなってしまう。また、デッサンをしている時にちょっとでもモデルが動く(微妙に表情を変える)だけで「見える通り」のものが変わってしまう(ように彼には見えた)。そのため、デッサンに描かれた線は何重にもなっている。ちょっと動く・変わるたびに線を描き換える・描き足していくからだ。特に顔、さらには目にその特徴が出ている。ジャコメッティの描くデッサンの目は異様。

ちょっとでも動くと「あぁ!」と声を上げて残念がるジャコメッティ。デッサンを仕上げるのに何週間も、時には何ヶ月もかける。そんな製作に付き合える・耐えられるモデルはそうはいなかったようだ。そのため、ジャコメッティのことを理解してくれる人じゃないとモデルは務まらない。
そんな中の一人に、「矢内原伊作」がいた。哲学者・評論家である彼はジャコメッティと親交を深め、多くの作品のモデルとなっている。彼が取っておいたため、ジャコメッティの製作にかける情熱とも、執拗性とも言える面を知ることができた。新聞紙やチラシなど、そこらにある紙に矢内原伊作の顔をデッサンした下絵・習作が多数残され、今回展示されている。アトリエでしっかりとした形で描く習作だけではなく、時間があればところ構わずどこででも描いたのだろう。そのデッサンに描かれた矢内原伊作の顔・目は、例によって何重にも線が重なっている。

★ 感想

横顔はそんなに違和感がないのに、正面から見ると極端に細くデフォルメされている。彼の目には人がこのように見えるのだろうか。

目の位置、傾き、表情、視線の方向などに極端にこだわっている。デッサンや肖像画を観ても、目の部分に何重にも線が描き込まれている。何度も何度も輪郭を捉えようとした跡なのだろう。
手ぶれ補正機能付きのカメラを貸してあげたくなる。

一転して、リトグラフのデッサンのために描いた作品は即興的だ。ペンが違うそうで、書き直しができない(非常に難しい)ため、このような描き方になるのだそうだ。
その手法で描かれた人物たちはそれ故、動きが非常に強く感じられる。そして、そこに物語性が生まれているように思えた。詳細に描かれたわけではない背景のため、余計にそれを想像で補う余地が生まれ、観る側が勝手にストーリーを想い描けるのだ。このシリーズが私は一番気に入った。男女が街角で偶然に出逢い、ぎこちない会話を始めた瞬間だとか、客室が並ぶホテルの廊下を歩く男と、角に隠れている女。なんか、そんな物語を勝手に作ってしまった。

サルトルが「人間の実存を表現したものだ」と語ったという、このひょろながの人物像。目鼻立ちに拘ったジャコメッティ。つまりは、人の本質とは「顔」ということなのだろうか。胴体や手足はそれにひょろひょろっとぶら下がっているだけの付属物なのだろうか。それとも我々は、夏の日の陽炎のようなフワフワと漂う存在なのだろうか。
そういえば、先端恐怖症の人が見たら悲鳴を上げそうな、鼻がやたらと伸びた頭部だけの像もあったな。なぜか頭が吊されていて、髪の毛(?)と伸びた鼻との重量が釣り合っているあの像。つまりはあれだけで良かったのか。

色んなことを考えさせられる作品群だった。暑い日が続くけど、観に行くべきですよ、これ。
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★ 美術展情報

「ジャコメッティ」展は下記の通り、開催中。
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コメント 2

JUNKO

これはぜひ見たい!でも残念、9月までには行けないなー矢内原氏との交流を書いた本を読んでとても感動しました。「明日こそ」と制作に打ち込んだそうですね。
by JUNKO (2017-08-11 14:34) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
四六時中、顔を見つめられたら厳しそう。私にはモデルは無理です。
by ぶんじん (2017-08-11 17:56) 

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