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「世界報道写真展2017」 子どもたちの恐怖に怯える目、直視できない [美術 : 美術展、写真展紹介]

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東京都写真美術館で開催中の「世界報道写真展2017」を観てきました。

★ 展示内容

さて、世界報道写真展はWorld Press Photo (世界報道写真財団)によって行われるコンテストの入選作品を集めた写真展です。その名の通り、報道写真を対象にしたコンテストで、前年(2016年)に撮られた作品が中心となっています。「スポットニュース」や「現代社会の問題」など、八つの部門が設けられ、それぞれに単品作品・組み作品から選ばれるのです。その全ての作品の中で一点、大賞も選ばれます。今年は、BurhanOzbilici氏による、トルコで起きたロシア大使暗殺(といっても、衆人環視の中の犯行です)を撮った組み写真が選ばれていました。

大賞作品は、トルコの首都アンカラで開催された写真展のオープニングセレモニーで、駐トルコ・ロシア大使が挨拶をしていたところ、(非番の)トルコ警察警官によって射殺された事件を撮ったもの。犯行直後、倒れる大使の横で左手を高々と挙げ、何かを叫んでいる犯人の姿を捉えています。右手には犯行に使われた銃がしっかりと握られている状態。写真家も巻き添えを食って撃たれるかも知れない中、構図もしっかりしているし、ピントもばっちり。まるで、映画のシーンを撮ったスチール写真のよう。

ポスターにもなっているのは、「自然の部」で入賞した、スペインの写真家フランシス・ペレス氏による作品。本来は魚を捕るための網が身体に巻き付いてしまい、そのまま海を泳ぐウミガメの姿を撮ったもの。絡まった網を取る術をウミガメは持っていない。彼/彼女はこのままでは動きが取れなくなって餓死するか、捕食者に襲われるかしてしまうだろう。漁師にとっては意図しない“事故”もしくは、大事な網を破ってしまう厄介者かも知れないが。

「スポットニュース」、「一般ニュース」の部門は今年も戦争や犯罪に関係する作品ばかり。爆撃によって怪我をした子供が、恐怖の表情そのままで病院(?)で手当を受けているシーンや、自宅が政府軍によって捜索を受けている間、外で震えている少女を撮った作品や、赤ん坊を瓦礫の中から助け出すシーンなどなど。

爆撃などの直接的な戦禍を受けてなくても、自分の暮らしている国で戦争・内乱が起きれば国外に避難するしかない。その人々は難民と呼ばれるようになる。粗末な船の船底に詰め込まれて脱出を図るも、そこで“窒息死”してしまったり、海に落ちて波間を漂う水死体と成り果てたり、無事に陸地にたどり着いたとしても難民キャンプ暮らしが待っている。

★ 感想

いつもならば、他の作品たちに比べて癒しを与えてくれる「自然の部」の生き物たちを写した作品も、今年はシビアなものが多かった。餌を求めて農地に現れたヒョウや、密猟で角だけを切り取られて死んだサイなど、人間との関わりによって“被害を受ける”動物たちを捉えたものばかりだった。網の絡まったウミガメも然り。
客観的に観れば、人間の数が増えすぎ、他の生き物たちの生息域を侵食しているということなのでしょう。人間も自然の一部と思うと、そのうちに“調整”なのか、“フィードバック”なのか、“天罰”なのかが起きそう。まあ、地球温暖化もその一つなのでしょう。

難民をほとんど受け入れしていない日本。でも、世界ではこんなにも深刻な問題なのだと改めて痛感させられた。大元の問題である戦争やら紛争やらをなくさない限り、この問題に真の解決はないのだろうけど、それは人類百万年の歴史を見ても無理な相談らしい。であれば、共にある世界を指向するしかないのだろう。私たちも、まずは異文化を学び、受け入れる術を身につけていかねばならない。もちろん、受け入れるばかりではなく、守ってもらうべきルールや習慣も当然ながらあるだろうから、それを教えることも進めないと。どちらも教育なり何なりの、時間の掛かる取り組みが必要だ。2020年までに、と言う付け焼き刃ではない施策をとらねば。例えば、道徳教育も、国粋主義や民族主義を懐古するようなものではなく、異文化で育った子どもたちに向けて知ってもらいたいものを教えるものと捉えると、ずいぶんと違ったやり方・内容になるんじゃないだろうか。逆に、それを通して自分たちの文化のアイデンティティも見えてくる気がする。

そんなことを考えさせられた今年の報道写真展でした。毎年、(精神的)苦行のような気分になるこの企画展ですが、観ない訳にはいかないと思ってます。

★ 美術展情報

「世界報道写真展2017」は下記の通り、開催中。
  • 会期 : 2017/6/10(Sat) - 8/6(Sun)
  • 開館時間 : 10:00 - 18:00
  • 休館日: 月曜日 (7/17開館、翌7/18休館)
  • 料金 : 一般800円 学生 600円 中高生・65歳以上 400円 小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
  • 公式サイト : 世界報道写真展2017
  • 巡回 :
    • 2017/8/8(Tue) - 8/17(Thu) 【大阪展】ハービスHALL
    • 2017/8/20(Sun) - 9/3(Sun) 【広島展】イオンモール広島府中
    • 2017/9/6(Wed) - 9/18(Mon) 【埼玉展】イオンレイクタウンkaze
    • 2017/9/21(Thu) - 10/1(Sun) 【滋賀展】立命館大学 びわこ・くさつキャンパス
    • 2017/10/3(Tue) - 10/27(Fri) 【京都展】立命館大学 国際平和ミュージアム
    • 2017/10/30(Mon) - 11/12(Sun) 【大分展】立命館アジア太平洋大学
  • 図録 2,800円(税込み)
  • 参考書(オリジナル版図録)







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コメント 4

JUNKO

これは少し興味がありますね。世界の・・ですものね。
by JUNKO (2017-06-19 16:19) 

ぶんじん

JUNKOさんへ:
世界で何が起きているのか、その一端を知ることができる場だと思います。
by ぶんじん (2017-06-19 23:28) 

カエル

報道写真、感じるものが多いですよね。
by カエル (2017-06-21 11:31) 

ぶんじん

カエルさんへ:
うーん、と唸りながら観ていく感じです、まいど。
by ぶんじん (2017-06-21 19:37) 

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