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「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展 もう一つの世界・王国創造の記録 [美術 : 美術展、写真展紹介]

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★ 展示内容

ShareArtさんから招待状をいただき、東京ステーションギャラリー - TOKYO STATION GALLERY -で開催中の「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展を観てきました。
公式サイトの説明によると、
アドルフ・ヴェルフリ(1864-1930)は、スイス、ベルン近郊の貧しい家庭に生まれ、31歳で精神科病院に収容され、亡くなるまでの35年間を病院で過ごしました。収容から数年後、創作に目覚めた彼は25,000ページにおよぶ膨大な作品群を残します。美術教育を受けずに生みだされた他に類をみない表現、奇想天外な物語性、そして音楽に対する情熱はまさに驚異です。日本における初めての大規模な個展となる本展は、ベルン美術館 アドルフ・ヴェルフリ財団の所蔵品から70余点を紹介。緻密にして壮大、エキセントリックにしてファンタスティックな創造性をお楽しみ下さい。
とのこと。「アウトサイダー・アート - Wikipedia(アール・ブリュット:Art Brut)」と呼ばれる、“我流”で作られた(美術教育を受けていない人が作った)芸術作品の“分野”がありますが、アドルフ・ヴェルフリはその代表格なのだそうです。

展示は、作品群ごとにまとめられています。それぞれの製作期間は重なっているものが多いのですが、開始時期順になっています。
  • 1章 初期のドローイング/楽譜(1904-1907)
  • 2章 揺りかごから墓場まで(1908-1912)
  • 3章 地理と代数の書(1912-1916)
  • 4章 歌と舞曲の書(1917-1922)/歌と行進のアルバム(1924-1928)
  • 5章 葬送行進曲(1928-1930)
  • 6章 ブロートクンスト―日々の糧のための作品(1916-1930)

彼の主治医が“観察(診察?)記録”を付けていて、それも併せて紹介されている。それによると、「彼の絵はいつも同じ。空想の無秩序。驚くべきは直線や単純なカーブを、道具を使わずに描く技術だ」とのこと。彼の絵には、同じようなモチーフや模様が繰り返し描かれている。それはまるで、一つずつの模様が文字か記号のような感じ。彼にしか分からない言語体系がそこに作られている。
初期の作品にも既にそれらは描かれていて、晩年の作品に至るまで共通している(変化していない)ものが多い。

不遇な少年時代を過ごした彼は、「揺りかごから墓場まで」と題した作品群によって、子供の頃の記憶を“入れ替え”ようとしている。その中でアドルフ少年は、世界中を旅行して回る。この作品はそんな空想世界での旅行記なのだ。彼は(精神病医でも読むことの出来る)雑誌の記事や広告から知識を得たのだろうか、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカの各地を巡っていく。
彼にとっては、病院に入院している(閉じ込められている)世界ではなく、この作品の中こそが本当の世界・彼が生きている世界だったのだろう。

「地理と代数の書」で彼は一つの王国を築いていく。彼は蓄財をし、その富が利子によって膨れあがっていく。その金によって世界中を買い上げていき、彼の王国に組み入れていくのだ。彼はそのために利子計算を繰り返す。年ごとの金額が何十ページ、何百ページにも渡って試算されている。これは、彼の未来予想図なのである。その王国で彼は自ら「聖アドルフⅡ世」を名乗るのだった。

「歌と舞曲の書」は、その王国における祝祭歌なのだろう。そのページ数、五千。雑誌の切り抜きと思われる写真や記事をコラージュ風に配し、それらを囲んで言葉が並ぶ。

彼は自分の死期を感じ取っていたのだろうか。「葬送行進曲」ではマントラのごとく、いくつかのフレーズと、何かを表す数字が繰り返し、繰り返し書かれている。キーワードは“揺り籠”を表す“ヴィーガ”という方言。このフレーズを中心に、マントラは続く。
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★ 感想

「王国を創造する」ということはこんなにもパワーのいることなのかと感嘆。そんなに教育を受けていなかっただろう彼が、こんなにも想像を広げられたのはなぜなのだろうか。しかも、病院に措置入院させられていて外を歩き回ることはできなかったのに。彼の知識の源は新聞や雑誌だったのかな。画用紙ではなく、作品作りには新聞紙を使っていたそうだから、そこにも彼なりのこだわりがあったのかもしれない。
自分の王国を築き上げるのに、武力で侵略するのではなく、蓄財によって得た富で領地を買い取っていくという発想もおもしろい。そのために彼は、軍事計画ではなく、利息計算に固執している。その執念たるや、ものすごいものがある。利息表を何ページに渡って書き記してるのだろうか。ヘンリー・ダーガーの王国は少々血なまぐさいところがあるが、アドルフ・ヴェルフリは経済戦争を挑もうとしていたという感じ。
自分だけの空想の世界を想像するって、だれしも子供の頃に経験したもの。「二十世紀少年」のようなもの然り、「トム・ソーヤ」然り。それを大人になっても、そして死ぬまで続けられたのは幸せなことなのかもしれない。”悟りを開く”とはまさにこの境地なのだろう。仏たちが居並ぶ曼荼羅や、千年王国と同じ意味合いだ、彼の創造した王国は。教祖と呼ばれていないのは、彼がその王国の”国民”を欲していなかったからにすぎない。


言葉で彼の作品の説明をするのはとても難しい。とにかく、実際に観てもらわないことにはこの迫力、パワーは分かってもらえない。一見の価値ありです。私も、久しぶりに図録を購入してしまいました。
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★ 美術展情報

「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」展は下記の通り、開催中。




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