So-net無料ブログ作成

「挿絵本の楽しみ ~響き合う文字と絵の世界~」展 時空を越えて理解し合えるメディアとしての挿絵本 [美術 : 美術展、写真展紹介]

IMG_20170416_172526.jpg

★ 展示内容

静嘉堂文庫美術館で開催されたブロガー内覧会に参加してきました。
例によって、特別の許可を得て撮影をさせてもらいました。通常は、撮影NGです。

収蔵書籍二十万点を誇る静嘉堂文庫美術館が、その中から今回選んだのは挿絵本。主に、日本は江戸時代、中国の書籍は明・清時代のものからチョイス。
図説入りの書籍は、現代では当たり前の存在だが、元々はそうではなかったとのこと。特に中国では、文字に対する絶対的な信仰のようなものがあったため、本に絵を入れるなどもってのほかだったそう。
しかし、時代が下るにつれ、本は特権階級の独占品ではなくなってくる。そうなると、より分かりやすいものを求める声が大きくなり、挿絵本が生まれてきたのでした。

そんな挿絵本を集める今回の企画展は、その内容別に五つのコーナーに分けて展示されています。それが、
  • Ⅰ.神仏をめぐる挿絵
  • Ⅱ.辞書・参考書をめぐる挿絵
  • Ⅲ.解説する挿絵
  • Ⅳ.記録する挿絵
  • Ⅴ.物語る挿絵
の五つ。

ゴシックの大聖堂は、建築の形をとった聖書だとか、文盲のためのラーニングシステムだと言われますが、仏教でもそれは同じこと。ありがたい経典も解読するのが難しかったり、そもそも文字が読めない人たちには猫に小判。やはり、イメージの力に頼ることになります。
今回の企画展では、「妙法蓮華経」の意味を絵巻物にした作品などが展示されています。
IMG_20170416_164239.jpg


中国で挿絵本をもっとも広める原動力となったのが“科挙”の参考書。科挙とは、隋の時代から、清朝末期まで続いた、官吏登用のための試験のこと。そう、国家公務員試験ですね。
科挙には儀礼・儀式に関する知識を問う問題なども出てきたそうですが、貴族の出でもなければそんなことを知っている者はいなかった。そのため、図入りでの解説本が大人気となったのです。
身分ごとに分かれていたスカーフ(ネクタイ?)の形を示している挿絵本などが展示されています。確かに、絵を見ればどんなものなのか一目瞭然。こりゃ、人気が出るはずです。
IMG_20170416_163917.jpg


江戸時代の日本では、絵入りの辞書・百科事典が編纂されています。「翼」「羽根」「尾(羽根)」など、鳥の各部位について分かり易く描かれているページが紹介されていましたが、こちらも挿絵の力は偉大。そして同時に、人々の知識欲がそれだけ向上していたということでもあるのでしょう。
IMG_20170416_163747.jpg


デッサン見本帳とでも言えばいいのでしょうか、絵のお手本としての挿絵本も多数、出版されています。このニーズはわかりますね。もちろん、絵画作品そのものを見ればいいのでしょうが、まとまって本の形になっていれば参照するのに便利。
でも、こうなると“挿絵”というよりは、絵の方がメインかも知れませんが。
IMG_20170416_163657.jpg


図入りでの記録簿としての挿絵本として、今回は旅行記や漂流記が取り上げられています。異国の風俗はまさに言葉では書き表せないものだったのでしょう。共通概念の確立していないモノを言葉だけで人に説明するのはほぼ不可能。図示することは必須です。
IMG_20170416_163602.jpg


挿絵本を、今回の展示では“目的別”、“対象読者(層)別”に分類した形になっています。ニーズがあってこそ、需要も大きくなっていくもの。挿絵本を発展させた“マーケットニーズ”はこんなにも多様なものがあったんですね。

★ 感想

「挿絵本の楽しみ」方ってどんなものなのだろうかと、展示を見る前は思っていましたが、なるほどこんな分類ができて、それぞれに特徴があるんだなと知って、深く納得。
そして、現代の我々にとっても挿絵が描かれていると、そこに何が書いてあるのか文字が読めなくても理解できます。中国語はもちろん、日本語も草書でサラサラと書かれていては判読不能。それでも、挿絵を見れば、身分ごとの役人の服装について説明してあるのね、と分かってしまう。そこには数百年の時と、国・文化の違いを超えて共通理解が成り立つ世界があるのでした。そう、それが挿絵本なんですね。時空だけでなく、文化の壁も越えるメディアとして機能しているんだと実感しました。
いやぁ、これは確かに 楽しい! おすすめです。

そうそう。細かい・小さな図も多いので、単眼鏡・オペラグラスの類を持参するといいでしょう。

★ 美術展情報

「挿絵本の楽しみ~響き合う文字と絵の世界~」展は下記の通り、開催中。

IMG_20170416_143914.jpg





nice!(10)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 10

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0