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「古代ポンペイの日常生活」 [読書 : 読んだ本の紹介]


古代ポンペイの日常生活 (講談社学術文庫)

古代ポンペイの日常生活 (講談社学術文庫)

  • 作者: 本村 凌二
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/03/11
  • メディア: 文庫


古代ローマ風呂を舞台にした漫画が人気だとか。二千年前にこれだけの文化が発達していた(できあがっていた)のかを知り、驚くばかり。さすがはローマですよね。そんな、二千年も前の庶民の日常生活が鮮やかに描けるのも、ポンペイの遺跡のお蔭かも知れません。

本書は、そのポンペイ遺跡で見つかった一万にも及ぶ”落書き”から、当時の庶民の日常生活を読み解こうというもの。落書きといっても色んなものがあり、選挙戦の“ポスター”から娼家の壁に残る猥雑なものまで多岐に渡り、まさに彼らの表の顔と裏の顔が全てわかってしまうのだ。
噴火で逃げ遅れた犠牲者たちの最期の姿を石膏像にしたものはあまりにも有名だから知らない人はいないだろうが、ローマの歴史やポンペイの街の様子をよく知らない人も大丈夫。第一章ではその辺りを駆け足ながらちゃんと説明してくれている。どんな風にして、灰に埋まっていたポンペイの街が掘り起こされていったのか、その発掘の歴史も簡単ながら紹介されていて、遺跡がまさに奇跡的に残り、後世に伝えられてきたんだなというのがよくわかります。その発掘史だけでも、何冊もの本になりますね。

ポンペイはローマの植民市になり、ローマ式の政治体制を取り入れ、街の代表を選挙で選ぶようになった。今だと選挙ポスターに当たるものが、壁の“落書き”として候補者名や、推薦人の名が書かれる訳だ。推薦者には個人名もあれば各種組合の名を記したものもある。今も昔も変わりませんね。組合としては「風呂焚き」や「木材運搬人」、「ニンニク商人」、「床屋」、「居酒屋」などなど、いろんな同業者組合があったようだ。
ちなみに、ローマでは既に帝政に移行していたけど、ポンペイでは共和制時代の“古き良き制度”が残っていたということですね。そんなことも本書では説明してくれています。

選挙の“落書き”は落書き専門家が書いたものだったようだが、風呂屋や居酒屋、そして娼館に残された落書きはもっと庶民的。まさに庶民が思い思いに書いたもので、それ故にさらに彼ら・彼女らの生活の様子がわかるものになっている。お気に入りの剣闘士を応援するメッセージもあれば、恋敵に呪いの言葉を浴びせるもの、そしてラブレターと、種類は様々。まさに今の我々とほとんど変わらない“庶民感情”を持っていたんだなと実感してしまいます。
本書で面白いのは、落書きの内容そのものを読み解くと共に、そもそもそれらを書いた庶民の識字率がどうだったんだろうかと言うことを見いだそうとしているところ。一万もの落書きがあるからこそ、そんなこともできるんでしょうね。庶民が書いただろう落書きにはやはり文法的におかしいところや綴りの違っているものが多数あるが、逆にそれだからこそ彼ら自身がその落書きの主であることを示していると見て取り、どんな人たちが文字を書けたのかを推し量ろうとしています。また、悪口や恋敵への警告などは、相手もそれが読めるだろう事を前提に書かれているはずだとし、その相手もまた読み書きができると推測していく。そんな感じで見ていくと、大工の棟梁にも、娼婦のお姉さん(?)にも、文字を読み書きできる人たちがいたことがわかります。識字率、やっぱり高かったんですね、ローマの街は。
そうそう、著者は「識字率」の定義に関しても論じています。ちょっとローマ・ポンペイの話からずれるところはありますが、庶民文化を知る前提としてはこういうこともきちんと議論し、定義していかねばならないんだなと認識させてくれます。

あと面白かったのが「略語」。石碑にしろ、落書きにしろ、紙に書くのに比べると文字を書くのは大変。なので、わかりきった言葉・決まり文句は省略して一文字・二文字で表されることが多いんです。「碑文から見た古代ローマ生活誌」で読んで、そういうことがあることを知っていたんですが、碑文の決まり文句だけではなく、今で言えばギャルの使う「K.Y.」のような流行語もあったようで、こんなところからもローマの人々に親近感を持ってしまうのですよ。

ということで、感想をまとめるとただ一言。古代ポンペイの人たちも、私たちと変わらなかったんだなぁ。そんな気分にさせてくれる楽しい本でした。これ、おすすめです。




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テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

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  • 作者: ヤマザキマリ
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2009/11/26
  • メディア: コミック



テルマエ・ロマエ II (ビームコミックス)

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  • 作者: ヤマザキマリ
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2010/09/25
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コメント 9

はくちゃん

こんばんは
お正月休みは終わりました
(^^)/

by はくちゃん (2011-01-04 21:02) 

kimiko

人のこころのメカニズムだけは古今東西?変わっていないんですねー?
「ポンペイ最後の日」という映画は観ましたが、ストーリーも思いだせない位ムカシです。^^;

by kimiko (2011-01-05 10:28) 

kana

遅くなってしまいましたが今年も宜しくお願いします!

ポンペイの遺跡、ほんとに一瞬で街がこうなるのかと、
現場に立って一瞬立ち尽くした記憶があります。
ローマ時代にも落書きってあったんですね^^;
by kana (2011-01-07 17:55) 

ぶんじん

はくちゃんさんへ:
終わっちゃいましたねぇ。でも、また三連休です^^

kimikoさんへ:
ありましたねぇ。その映画、私も観た記憶が。うむ、確かにどんな話だったか記憶が定かではなく。。。

kanaさんへ:
こちらこそ、よろしくお願いします。
おお!実際に行かれたんですね。私も行ってみたいなぁと思っている場所の一つです。
落書きのお蔭で、二千年後の今、彼らの生活がわかっちゃうのが不思議。
by ぶんじん (2011-01-07 23:33) 

JOY

この本も楽しそうです!
by JOY (2011-01-08 07:47) 

TaekoLovesParis

私も小学生のとき、少年少女文庫で「ポンペイ最後の日」という本を読んで、
とっても憧れてました。で、25歳のとき、見に行くことができました。もう廃墟に
なっているけれど、いろいろ想像しながら歩いて、間取りなど考えながら、楽しかったです。そのあと、いろいろな所での「ポンペイ展」を見に行くと、さらに、いろいろ
詳しくわかり、昔も今も基本は変わらない生活というのがわかります。この本は、
識字率に焦点を当ててるんですね。省略形が昔から使われていたのも、聞くと
なるほどと思えます。
by TaekoLovesParis (2011-01-08 14:32) 

ぶんじん

JOYさんへ:
読み易くて、硬軟取り混ぜた話が盛り込まれており、楽しめましたよ。おすすめです。

TaekoLovesParisさんへ:
いいなぁ、私も行きたいなぁ。二千年前の街ですからねぇ。廃墟とは言え残っているだけでもまさに奇跡ですね。
by ぶんじん (2011-01-10 09:46) 

pon

落書きから識字率ですか~~面白いですね。
ローマ史は好きなので、この本も興味深々です。

by pon (2011-01-11 22:11) 

ぶんじん

ponさんへ:
おお!ローマ史好きでしたか!!アミーキと呼ばせてください。
by ぶんじん (2011-01-14 00:14) 

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